GSバンドがルー・ドナルドソンのジャズに日本語詞をつけて演奏した

GSのパフォーマンスで日本語で歌われるのを聴いて知りましたが原曲はルー・ドナルドソンのサックスの6分くらいあるインスト曲。短い器楽的なモチーフのリフレインで構築され落ち着いた洗練された色気あるフィーリングの楽曲です。

「ソ・♭シ・ソ・シ(ナチュラル)・ソ・ド」という、ナチュラルマイナーのスケールでⅴの音を着地の水準にしつつ和声的な導音を経過して半音上行しながら次の小節の頭で主音にキュっと刺すモチーフと、Ⅰ・Ⅳ・Ⅴのシンプルな和音をセブンスや♭3をぶつけた感じの濁したブルーノート的響きのかけあわせでセクションを経過していくのがルー・ドナルドソンの器楽の原曲の特徴です。

世界のいろんな音楽を現金に貪欲に取り入れるのがグループサウンズバンドジャンル一帯の安っぽくも美しく楽しい魅力だとも思います。ヒットや名声、あるいはときにはひとりよがりな趣味性のために、極端に意地汚くハングリーにもなれる、ポリシーないのか?とツッコみたくなる側面もGSの可笑しな特長だと思います。そうした振れ幅、「ブレ」とも揶揄されかねない雑食性こそが、私が音楽の楽しみを広げる港になってくれてもいます。こうしてルー・ドナルドソンの原曲のジャズに興味が向くきっかけをくれるのもまさしくその一例でしょう。

私が参考にしたザ・ハプニングス・フォーのボーカルモチーフを聴くと、原曲の半音で導音を経過してずりあがるモチーフ形は歌いやすいように少しアレンジしているように聞こえます。「ソ・♭シ・ソ・シ(ナチュラル)・ソ・ド」を→「ソ・♭シ・ソ・♭シ・ソ・ド」としているように感じるのですがどうでしょう。自分たちがボーカルミュージックとバンドの演奏で表現するためのマイナーチェンジ的改変の工夫なのかもしれません。世界に飛び火・拡散するときに、細部がそのように訛る、伝言ゲームのように歪曲が起こるのも音楽鑑賞の尽きない楽しみです。

アリゲーター・ブーガルー 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Lou Donaldson。Lou Donaldsonのアルバム『Alligator Bogaloo』(1967)に収録。ザ・ハプニングス・フォーによる実演は伊藤きよ子&ザ・ハプニングス・フォーのアルバム『オー・ガンソ(花のマドンナ)』(1968)に収録。日本語詞:松島由佳。

Alligator Bogaloo アリゲーター・ブーガルーを聴く

ぬるっとせまりくるモチーフとなめらか・スムースな曲調が妖しげで色気があります。水中をすぅーっと平行移動するワニ、アリゲーターっぽいですが私のこじつけでしょうか。ブーガルーとはそもそも、ラテンやキューバ系の特徴とソウル・R&Bの融合が図られたニューヨークで流行った音楽・ダンスだとか。

ゲイン感あるグモグモっとしたベースの音色に、手数がこまかくて闊達なドラムスがライドで調子をとり、フィルインで安定感をかき乱します。ソシソシソド……という動いてはぴたっと止まる動きが狩りを生業とする肉食動物っぽいですね。8小節単位のモチーフのリフレインに4小節のフックがついて12小節のまとまりのセクション。ブルースの音楽形式を思わせます。前半の8小節の動いては止まるモチーフと、跳躍音程を含めて音価がひろがる4小節の折り返しが対比になっています。

闊達なドラムのフィールに対してサックスがスムース。オルガンが和声の濁り感を表現して思えます。ソロ回しではコルネット、ギターも登場。モチーフをユニゾンするときは右がコルネット、左がサックスの定位になっている感じでしょうか。モチーフの提示とソロ回しで永遠に聴いていられそうで、エンディングの処理は展開するのをやめて同じことを繰り返しはじめたらフェード・アウト。

ジャズや音楽鑑賞に熱心でなくても、なんだかどこかで聴いたことのある名曲だったのだなと改めて思います。

ハプニングス・フォーの実演が配信で聴ける

ワチャワチャしたガヤ感が動物園かよとツッコミたくなります。

左にピアノ、右にエレキ。わくわくする躍動感に満ちたリズムにクラップも絡みます。ドラムは右に、ベースは左に振ってあって、まんなかあたりでリードボーカルが強烈にエコー・ディレイし、私を酩酊させます。右の歪んだエレキのアクセントが激しすぎる。スピーカーが壊れたのか私の耳が壊れたのかと思うくらいに激しい音色です。若者のおふざけグループみたいなイロモノ感もあっておかしみがあります。もうちょっと緊張感を持って迫らないとエモノに逃げられちまうぜ? とツッコミたくさせるのもまたGSの憎めない魅力でご愛嬌。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ルー・ドナルドソンザ・ホワイト・キックスAlligator Bogaloo

参考歌詞サイト プチリリ>アリゲーター・ブーガルー

Lou Donaldsonのアルバム『Alligator Bogaloo』(1967)

『アリゲーター・ブーガルー』を収録した伊藤きよ子&ザ・ハプニングス・フォーのアルバム『オー・ガンソ(花のマドンナ)』(1968)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『アリゲーター・ブーガルー(GSバンドに日本語詞でも歌われたルー・ドナルドソンのジャズ曲)飛び火する現金【ギター弾き語りとハーモニカ・寸評つき】』)