大河の一縷
GSひとしきり流行りおわったかなという時期の発表曲で、その時流の背景もあってか、GSやタイガースっぽさが薄く感じます。どこか、ソロの大歌手の代表曲みたいな気高さと孤独な輪郭を感じます。赤い鳥の翼をくださいの山上路夫さんが作詞、GSバンド:ザ・ハプニングス・フォーのメンバーとしても活躍したクニ河内さんの作・編曲。
AセクションはやばやのⅣマイナーをボーカルメロディのスケールに反映させた響きが特徴。
つかみどころのない放浪感は転調によるものでしょう。G→Bm→A♭→Cm→A♭と根をもたずさすらうように移ろいつづける調性の動きが、とどまらず、流れ、代謝する都会の性格、傾向をとらえて表現します。“都会は今日も さざめき歌って 僕の涙に 気づきはしない”と結ばれる歌詞が都会の非情さ・巨大さにおける自己の儚さ・矮小さを悟り、静かに物語ります。「あばよ……」という辞世の句のようないさぎよい諦観がただよいます。
都会 ザ・タイガース 曲の名義、発表の概要
作詞:山上路夫、作曲:クニ河内。ザ・タイガースのシングル(1970)。
ザ・タイガース 都会を聴く
無機質なコンクリートの、無限に広がる遮蔽物のないピロティにみたいな冷たい残響が長く長く尾をひきます。メンバーのバックグラウンドボーカルが両サイドからたちあがる。これが地面にはりつくみたいに、しあわせになろうととびたたんとする挑戦者の足にすがりつくみたいにねっとりと低めのピッチに感じます。都会のものいわぬ沈痛さ。色気と輝きをはなつジュリーの歌声とコントラストをなします。
右にドラムが定位し、軽いサウンドです。パコパコと手捌きが達者。ズゥンとベースの音色の重心がきわめて低い。モコモコせずほかの楽器にもかぶることもありません。
Aセクションの引き算が映えます。対して2コーラス目のサビは演奏のダイナミクスも派手になります。
1コーラス目がおわるとポンと半音上の調へ転調。Gではじまった曲はA♭メージャーに。朝日がビルの頂上の高さを上回って、急激に光が漏れるみたいに世界の面持ちが一変する転調です。
オーボエの音色が冷たいビルをなでる朝日の暖かみのはざまをさまよう漂流者のように孤独で哀愁深い。名演ですね。
ザ・タイガース 都会 ライブバージョン(『ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム』1971年)が発表されている
黄色い歓声がすごい。GSの最たるブームは1969年くらいまでとする説がありますが、このライブの現場におけるタイガースの人気ぶりは翳りの気配なんて微塵もありません。
青沼詩郎
THE TIGERS | ザ・タイガース – UNIVERSAL MUSIC JAPANサイトへのリンク
『都会』を収録したザ・タイガースの『シングル・コレクション』(2013)。『都会』の英題が『Solitude In The City』であるのがジャケットからわかります。
『都会』のライブ演奏を収録したライブアルバム『ザ・タイガース・サウンズ・イン・コロシアム』(1971)