心のまぶたは開かれ、閉じられる
録音作品の発表はちょっとだけ……ビリー・プレストンへの提供のほうが2か月くらい早いようです。アルバム『Encouraging Words』に収録されています。
ビリー・プレストンバージョンはいかにも黒っぽくソウルフルなアプローチ。その2か月ほどのち、ジョージ本人名義の本曲と同名のアルバムに収録されます。アルバム表題曲なわけです。エリック・クラプトン。ビリー・プレストン。クラウス・フォアマン。リンゴ・スターなど豪華な実演家が携わっています。ビートルズとしても本曲のリハーサル?などはおこなわれていたそうですが、ビートルズ作品には結果としてなりませんでした。
ジョージ・ハリスンらしいテーマ設定。ティモシー・リアリーという方の同名の詩があるそうで、その詩はそもそも中国の老子の思想を着想点にしているそう。それら、ものを考えてきた人類の先達の功労を受け継いでジョージ・ハリスン作品として顕現したのですね。すべては経過する……苦しいことがあっても明ける、雨が降っても上がる、必ずや。感動的です。こんこんとピアノの四分打ちが希望の扉をたたくみたいです。
All Things Must Pass George Harrison 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:George Harrison。George Harrisonのアルバム『All Things Must Pass』(1970)に収録。
George Harrison All Things Must Pass(2014 Remaster)を聴く
ジョージの声が埋もれてしまいそうに儚く、オケ・バンドの音がリッチで肉厚です。ピアノの四分打ち。右に暖かな質量豊かなアコースティックギターのストラミング。おおらかなビートの流れのなか、ドラムのキックが強拍に向かって飾りをつけるパターンで分割の解釈・解像度をささやかに表明します。ホーン類のオブリガードが心頼もしい。
長い長いポルタメントする音色の楽器はなんなのか・ピュ〜〜ィィイ……と光の強さが揺らぐみたいに息が長い。スティールギター+ボリュームペダルでこんな音が出せるのか、あるいはテルミンなどなのでしょうか。Wikipediaのクレジットに頼るに、ペダル・スティール・ギターが含まれているようです。生きているみたいな変化に富む音色が同時に示唆にも富んでいます。すべては経過するとの主題を表明・代弁する印象的な音色だと思います。
苦しいことも、痛みや悲しみもやがて過ぎ去るさというふうにも読めると思ったのですが、愛や恋の魔法、快楽や充足も長続きはしない……その虹色の幻の雲も正気を取り戻すと同時に晴れてしまうんだよと言っているようでもあります。
経過を続けていくのみなのです。今いる場所から一歩進めば、一歩進んだなりの景色がみえてきます。それは一歩手前にいた頃とほとんど変わらないかもしれません。向こうからやってきたり、空模様みたいに圧倒的な力と物量であなたの身の周りの様相を一変させてしまう要因にも溢れているのがこの世界です。
コーラス(サビ)の入りがⅤmなのがすごくいいですね。ボーカルの音程もⅤのマイナーを性格づけるナチュラルの「レ」の音程ではじまっています。本曲のキーはEです。その変調に乗せて、主題の「All Things Must Pass」と歌われる。すべては経過し、移ろって、秩序・絶対神だと自分が信じてきたものすら幻だったと気づき、幻滅しては出会い立ち直り、晴天雨天曇天が入り混じる命の潮流のさなかです。
世界は無限の経過のかけ合わせ。
青沼詩郎
参考Wikipedia>オール・シングス・マスト・パス (曲)、オール・シングス・マスト・パス
参考歌詞サイト Genius>All Things Must Pass
George Harrison | Official Websiteへのリンク
George Harrisonのアルバム『All Things Must Pass』(1970)
Billy Prestonのアルバム『Encouraging Words』(1970)