操るか操られるか
ラストアルバム『PSYCHOPATH』収録曲。アニメーション作品の“サイコパス”のおかげで私は単語の存在自体は知っていましたが、それよりもずっと前の時代にこの単語を主題にアルバムを制作していたことに衝撃。
スピーディでスリリングなビートにのって、日本語に英語が交わり私を幻惑します。なんの意味をもつ言葉を急に放り込んだのだろう?私に対してガシャンとシャッターをおろします。気になる。あなたの思いはなんなのか。手のとどかない孤独の虚空を思わせます。
BキーあるいはG#mのシャープ5つ系の調号から、途中のセクションでBメージャーからみれば長2度下あるいはG#mからみれば平行調の下属調の下属調といいますかAキー:シャープ3つ系の世界に転調します。2面性を感じる展開です。
マリオネットの主題が千金。糸の存在をアイデンティティの前提としたマリオネット。黒幕に操られることのみで生命(動き)を得ることのできる存在。それを断ち切って自発で生きてみろとの檄なのか。あるいは操る側になることへの風刺なのか。
イントロのアルペジオリフが提示する楽曲の顔のイメージもまた本曲の重要な遺伝子です。このアルペジオリフが乗る6251のコード進行はサビセクションと同一の進行になっています。BOØWY作品ですしリードボーカルはいわずもがな氷室さんですが、エンディングで布袋さんのボーカルを聴くことができます。英語詞で何やら主題“MARIONETTE”に迫る何かを唱えているようです。
MARIONETTE BOØWY 曲の名義、発表の概要
作詞:氷室京介、作曲:布袋寅泰。BOØWYのシングル、アルバム『PSYCHOPATH』(1987)に収録。
BOØWY MARIONETTE(アルバム『PSYCHOPATH』収録)を聴く
まっしぐらなバンドの音、演奏の骨子の強さもさることながら音の演出にも余念がありません。ときにホテイさんのソロ作品にも聴くことのあるようなオーケストラ・ヒットの音色ともまたちょっと違うのですが金属的なガシィンキィンという出自不明の音。それから8分音符くらいの音価の一定のリズムが左から右定位に動いていく演出なども都市のうごめくインフラストラクチャーのような印象です。タムが左右に爆発的に定位を広げるようなサウンド構築も鮮やかで、直線的なドラムスやベースの鋭さをより際だてます。
エレキのガピー、キュィーンと金切り声をあげるピッキングハーモニクスは断末魔の叫び。メインリフのアルペジオは輪郭に広がりがあります。何調なのかフワフワさせる間奏ギターソロの前半は激しいアーミングを用いたちりめんヴィブラートのごとくゆらめくサウンド、対する後半は左右に定位を分けてツインギター調にハモります。
ホテイさんのサイドボーカルの存在感があらためて両耳のヘッドホンで聴くと際立ちます。You’ve got an easy dayをリードボーカルに続いてすかさず補完。字ハモもホテイさんでしょうか。エンディングの英語の歌詞は“Marionette in the mirror”ですね。ヘッドフォンで聴いたら聞き取れました。ずばりサビのメインフレーズ、「鏡の中のマリオネット」の変換・翻訳です。
本曲における日本語と英語の関係が、本心とうわべ。操る主体と操られる人形(マリオネット)。光と闇。ヒムロ×ホテイ。協調するか対決するか、多様な極性の対比に思えます。ラストアルバムの中核をなす楽曲でこの鮮やかさは卓抜してスタイリッシュ。切れ味ほとばしります。操り糸なんかスパっと切れること間違いなし。
青沼詩郎
参考Wikipedia>Marionette (BOØWYの曲)、PSYCHOPATH
参考歌詞サイト 歌ネット>Marionette 〜マリオネット〜
BOØWY – UNIVERSAL MUSIC JAPANサイトへのリンク
『MARIONETTE』を収録したBOØWYのアルバム『PSYCHOPATH』(1987)