乙女の危機・動的逃走劇
同名の映画が2026年に公開されています。アイドルを辞めた人?の逃走を幇助する主人公のお話だそうで原作小説あり。なので題名は時代を象徴し一世を風靡したアイドル、ピンク・レディーの楽曲名にあやかって作品の名前をつけたのかなと推測します。ちなみにこの映画『逃げろお嬢さん』の監督・脚本は私のフェイバリットアニメ映画『スカイ・クロラ』(監督:押井守、原作:森博嗣)で脚本を担当した伊藤ちひろさん。『スカイ・クロラ』に沼った青沼(私です)としては気になります。
ピンク・レディーの楽曲のほう『逃げろお嬢さん』はリズムやメロディがきわめて平易に起伏・揚々、表情づけされており、アイドルに提供して歌わせる気のあるお手本のような楽曲だと思います。
「逃げろ」と歌われますがどうして逃げるのか? 釣られて泣くからです。地球の果てまで……とおおげさ。これが命です。主題を絞る。単純化、誇張、拡大、展開しまくる。大衆音楽の黄金手法ではないでしょうか。
といいつつ、どんな歌手にでも歌える……かどうかはわかりませんし、あくまでピンク・レディーのキャラクターをふまえて狙いすました楽曲として作ったのかもしれません。でももしキャンディーズとかが歌っていても私には違和感ないのではと想像します。
コードや低音位が局所的に1拍単位でめまぐるしく動く部分もあるなど、逃げろ!の主題に沿う動的な印象づけが音楽上の意匠によってほどこされていて巧妙です。歌としては平易さが秀逸だと思いましたが弾き語ってみると伴奏の表現が結構ガチャガチャ忙しいです。
逃げろお嬢さん ピンク・レディー
作詞:阿久悠、作曲:都倉俊一。ピンク・レディーのシングル『ウォンテッド(指名手配)』(1977)、『ピンク・レディー ベスト・ヒット・アルバム』(1977)に収録。
ピンク・レディー 逃げろお嬢さん(『ピンク・レディー ベスト・ヒット・アルバム』収録)を聴く
イントロから右定位のコンガが猛烈、キビキビしたヴァイオリン属の弓使いに「逃げろ」のスピード感が出ています。
しかしフルートがよぎりトランペットがピっとするどい音像でリズムや響きを添えて……娯楽音楽として豪華。はなやか。たのしい感じがする。緊迫感がないのです。危機感がない。楽しんでみえる。ほうら追ってきてごらんなさい。そんな感じです。
逃げる主体、世のお嬢さん方に「さあ逃げるのだ、お嬢さん」と呼びかける歌というのがストレートな解釈ですが、この楽しい音楽と歌唱を聴いているとそこがひっくりかえって聴こえてきました。
釣るのは誰か? はたしてお嬢さんを釣ろうとしている奴は本当に「釣り」をできているのか。ほんとうはお嬢さんがそいつを釣っていて、追わせて、釣らせて、を「させている」、誘発しているのではないか。わなにかかったふりをして、わなにかかったふりこそがお嬢さんが仕掛けているわななのではないか。だって音楽がたのしいんだもの。
逃げろ!殿方(??)がこの曲の主題なのではないか。
青沼詩郎(このお嬢さんにハマるとやばいかもよ)
『逃げろお嬢さん』を収録した『ピンク・レディー ベスト・ヒット・アルバム』(1977)