祈りに一途
ブリティッシュ・インヴェイジョンを語るときに名前が上がる筆頭がハーマンズ・ハーミッツでしょうか。
“Listen people”の上に向かって跳躍する音程が祈りのようで儚げ。この音形モチーフはそれぞれが1小節をのびのびとつかって6小節ほど反復されます。非常に単純な楽節であるのにも関わらず、特徴的で記憶に残ります。無駄のなさ自体が特長になるって秀逸。観念的な歌詞の透明さもあいまって楽曲に一途なキャラクターを与えます。
BセクションでⅢm、Ⅱmを繰り返しボーカルにリズムが出てきて好対照。CセクションはAキーの本曲のなかでGコード(Ⅶ♭的なものでしょうか)が出てきて響きやリズムに変化がもたらされ、AとBのセクションの対比とはまた異なるサウンドスケープが兆します。このCセクションは特にブリティッシュインベイジョンの到来感がありますね。
楽曲はシンプルにみえて、同一の語句の一連、あるいは同一の単語などが繰り返し登場するときでも、逐一メロディへの宛て方、扱い方、抑揚、起こり方などがいちいち変化します。弾き語りコピーをためしてみた私は思わぬ苦労に直面しました。この楽曲がシンプルなのに濃度がある所以ではないでしょうか。
本曲はハーマンズ・ハーミッツのメンバーの作なのか?と思って検索するとどうやら提供作で、グレアム・グールドマンのソングライティング。どんな方だとうと思って検索をつづけると、10ccのメンバーさんです。ブリティッシュ・インヴェイジョンもやはり個別の駒の力はもちろん、一群一群の手技手腕主張があって盛り上がっていたのかもなと漠然と空想します。
Listen People Herman’s Hermits 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Graham Gouldman。Herman’s Hermitsのシングル、アルバム『Both Sides Of Herman’s Hermits』(1966)に収録。
Herman’s Hermits Listen People(アルバム『Both Sides Of Herman’s Hermits』収録)を聴く
イントロのエレキギターのアルペジオが澄んだ響き。ボーカルのヴァースの歌唱も儚くやさしげ、祈りのようでもあるし独り言のようでもある。リッスン!人々!と俺の話をきけという横柄な態度とは対極。天に向かって、神様に自白をするような雰囲気。ボーカルが天井の高い教会で話しているみたいな長いリバーブをまとっているのもリスナーのイマジネーションを喚起します。
セクションが変わるとベースの図太いサウンドが耳を覆い尽くし圧迫します。対してドラムのスネアのサウンドがパコンと軽い。割り箸で叩いたみたいな質量感。日本のグループ・サウンズバンドのサウンドもこういったドラムスのかるい質感が味わえるものがままります。ボーカルのニュアンスがBセクションに入ると艶と気合が入ります。
Aメージャーキーで「ド♯ミー、シミー……」と単純な音形をリフレインする印象的なモチーフ。
検索しているとどうもこれ、讃美歌に原型があるとのこと(参考元へのリンク:Night Beat Records>Herman’s Hermits – Listen People / Got A Feeling)。『Jesus Let Us Come to Know You』と呼ばれるものだそうで、その名前でサブスクサービスを検索してみると確かにそっくりなものにたくさん出会えます。どれくらいこのJesus Let Us Come to Know Youについて歴史をたどれるのかがまだよくわかりません。この『Listen People』がもつ、信心深い敬虔な態度にはその由来自体に理由があったことがわかります。
『Listen People』のヴァースは讃美歌の引用が明瞭ですが、Bセクション、Cセクションに接続し楽曲の独自の創意が展開しているのが讃美歌のほうを聴いてみるとよくわかります。
青沼詩郎
参考Wikipedia>Listen People、ハーマンズ・ハーミッツ
ハーマンズ・ハーミッツ / HERMAN’S HERMITS ワーナーミュージックジャパンサイトへのリンク
『Listen People』を収録したアルバム『Both Sides Of Herman’s Hermits』(1966)