ツヤッツヤの衣装にキビッキビの振り付け。両腕の先を左右にパタパタとすばやく開いて閉じる動きが印象的。見た目をさらに派手に演出するゴムバンドのようなものをストールのように首にかけています。サビの終わりでこれの一辺を足で踏み、さらに両腕でひろげて縦長の三角形をぱっとつくってみせます。威嚇するくじゃくのようでもありますし、デルタ翼の戦闘機のようでもあります。ブルドッグが秘める闘志の象徴のよう。振り付けと小物による演出の妙です。

について

1977年発売のフォーリーブスのシングル曲。作詞:伊藤アキラ、作曲・編曲:都倉俊一。

リスニング・メモ

闘志剥き出しの、がなるような複数メンバーのボーカルが印象的。

ブルドッグは牛(bull)と闘う犬、という由来があると思うかもしれませんが、愛玩犬として認知されているブルドッグと、本当に牛と闘った犬種は別物だともいいます。

ブルドッグをそうした闘志の象徴として曲の主題に用いたかどうかはわかりませんが、この曲のボーカルパフォーマンスには、そうした戦闘に臨むような勇ましさがあります。

イントロや間奏の16ビートの猛烈なエレキ・ギター、ベースのユニゾンプレイ。私だったら指がもつれてしまいそうです。レファレドレドラド……といったフレーズはマイナー・ペンタトニックスケールですね。第2・6音を抜きます。Dマイナー調なのでミとシを抜いてフレーズをつくればこの感じになるでしょう。

上記のベース、ギターのユニゾンにドラムもチキチキチキチキ……とハイハットで加担。タイトです。イントロや間奏のところでは拍の表で1小節に4回スネアを打つパターンを入れて文字通り鼓舞します。

ベースはファットなサウンド。さきほどから話題にしている16ビートユニゾンプレイのところで臨場感が出て心がわさわさと高揚します。

エレキギターが左の方でカタカタとカッティング。サビではボーカルの休符に鋭く攻撃的なチョーキングをかまします。2拍目ウラですね。

ストリングスがベーシックリズムの支えのもと、華麗に舞います。

にっちもさっちも

にっちもさっちもは打ち消しを伴ってつかう言葉で、物事がどう工夫しても滞ってしまう様子を表現します。ですが、この曲では打ち消しをともなっていません。それどころか、「にっちもさっちもどうにもブルドッグ」です。ことばの秩序ギリギリ(アウト)のところで意味の超越をぶちかましてきます。この曲のロックなところですし、ポップなフックでもあります。天才か!と称賛したい伊藤アキラ氏の作詞。

おまけにウワォ!みたいなボーカルの追い討ち。これ、重要な好ポイントです。ブルドッグの咆哮でしょうか。

先述しましたが、愛玩犬としてのブルドッグに闘志はあまり関係ないかもしれません。

恋愛と遠い硬派なキャラクターを描くのに、ブルドッグというモチーフが飛躍した発想で組み合わせられた妙があります。実際の愛玩犬としてのブルドッグは、結構健康にナーバスでケアを要する生き物のようです。それも含めて男子どもは、にっちもさっちもどうにもブルドック、なのかもしれません。ウワォ!

青沼詩郎

『ブルドッグ』を収録した『ザ・ベリー・ベスト・オブ・フォーリーブス』

『ブルドッグ』のセルフカバー『ブルドッグ 2004』を収録したフォーリーブスのEP『少年よ大志を抱け / four leaves again』(2004)

ご笑覧ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『ブルドッグ(フォーリーブスの曲)ギター弾き語り』)