久保帯人『BURN THE WITCH』。
『BLEACH』を連載していた久保帯人の新作漫画。
何より気になったのはそのタイトル。
“魔女を燃やせ”
私はRadioheadが好きだ。かれらの楽曲に同タイトルのものがある。
Radiohead『Burn The Witch』
ストリングスの8ビート。音のキレがグルーヴを生む。痛烈な風刺と思えるタイトル。歌詞の内容もそうだろう。じんじんいっているシンセサウンドがあやしげ。トム・ヨークの声が柔和にリヴァーブ。
エンディング付近でキイキイと掻き立てるようなノイズを含めるストリングス。長和音に解決して爽快感。特定の人物を持ち上げて “燃やす” シーンでだ。
MVは音楽がやんだあとで「持ち上げられた人物」が難を逃れていたかのようなオチで終わっている。顔についたすすを拭う彼。
“魔女” は社会にいる。持ち上げられて燃やされる人物も社会にいて、日々代わる代わるしている。あらゆる人が、持ち上げられ、燃やされる危険と隣り合わせに生きている。
“魔女” は私の中にいる。私の中の魔女を、私は持ち上げて燃やす。ある魔女が燃やされたあとには、新たに持ち上げられて燃やされる私が現れる。それはかつて野次馬のひとりだった私。あるいは、これから生まれる私かもしれない。
“魔女” はいろいろな姿をして、いろいろなところに現れる。特定の個体が潰えても、その代わりとなる存在が生まれる。私はバトンを渡したか? 渡されたか? (くるりの『心のなかの悪魔』という曲を思い出す。)
久保帯人『BURN THE WITCH』
久保帯人のあたらしいこの漫画。
ドラゴンが登場する。
ドラゴンはインフラ。エネルギーや恩恵を人類にくれる。
でも、「魔女」以外がドラゴンにふれることはならない。
「魔女」以外がドラゴンにふれると、ドラゴンが、人の悪いものを得て凶悪な存在になってしまう。
魔女は、ドラゴンから恵みを受けるために接触を要する仕事もするし、魔女以外の人間との接触が原因で凶悪な存在になってしまったドラゴンの討伐もする。
2016年に『BLEACH』の連載を終えた久保帯人。
のびのびと描いているかのような本人コメントが『BURN THE WIRCH』単行本のカバー折り返しに寄せられていた。
『BURN THE WITCH』コミックス一巻の内容は、週刊少年ジャンプ2018年33号、2020年38号〜41号掲載分でできている。
2020年の掲載期間は寄っているけれど、2018年から2020年まではひらいる。2年くらいあったら、普通の週刊連載ならコミックスを6〜8冊くらいは出してしまう期間?
のびのび描けていらっしゃるのか。
『BLEACH』は、洋楽を意識した各回のタイトルが特徴だった。
今回も、久保帯人はRadiohead『Burn The Witch』(2016)を知っていてこの漫画にタイトルしただろう。いや、わからないけれど。
青沼詩郎
Radiohead『Burn The Witch』収録アルバム『A Moon Shaped Pool』
久保帯人の漫画『BURN THE WITCH』