作詞:ザ・ワイルドワンズ、作曲:加瀬邦彦。ザ・ワイルドワンズのシングル、アルバム『ザ・ワイルド・ワンズ アルバム』(1967)に収録。

右側にバンドがかたまり、左にストリングス、まんなかにボーカル。現代のバンドやポップのサウンドではまずみない定位づけですね。はっきりしています。

ボーカルがハーモニーパートも含めて真ん中にまとまって感じるので、「グループサウンズ」の「グループ」たる特徴を強く味わうことができます。バンドメンバーが声を合わせるフィーリング。よく調和しています。実直で確かなボーカルも好感です。

ベースはペキペキとピックの当たる質感。1拍目と2拍目のウラ、3拍目のアタマに置くストロークが力強い。ドラムスのキックとほぼ融合して聴き分けられない?(私のリスニング力とリスニング環境のせいかもですが)ほどで、良い意味で一体になったリズムのプッシュが強く出ています。タム類などは張力の強いチューンが感じられ、軽快なバチさばきが華やかです。フィルインはまさに聴きどころですね。スネアもバスっと余韻が適度でタイトでもあり、こちらの聴く耳まで引き締めてくれそう。

ストリングスが壮麗で麗しく、右側に振られたバンドのサウンドと双璧をなす中核です。みずみずしいですね。エレキギターが右側でチャキっとリズムを短く置くカッティングをしているでしょうか。たまに浮き上がるようなフィンガーボード上の動きを感じますがやはり右側でバンドが一緒になっているので数度聴き込むとギター像ももっと見えてくるかもしれません。繰り返すようですが、渾然一体となったバンドが「グループサウンズ」たる特長を思わせます。

倖せと幸せ 漢字のつづりの違い

倖せ」の文字をしばしば歌詞にみつけます。ひとたび、ふたたび、と見かけ、3度くらい見かけるといよいよ気になり出します。「幸せ」と何がちがう?

検索するに、「倖せ」のほうは、「思いがけずにやってくる」であるとか、にんべんが付いている見た目のとおり、「人との間」や「人とのつながり」において生じるものと使い分ける向きがあるようです。「こぼれざいわい」「あやうく難を逃れて」といったニュアンスもみつかります。

よって、「幸せ」は、先に述べたようなこと以外の広いニュアンスで一般的に用いやすい表現になるかなと思います。人との繋がりにおいてというよりは、一個の人間としてのもの。あるいは、思いがけずやってくるようなもの以外として、一個の人間がその醸成を願い・志し、ひたむきに進歩や成長のための努力を重ねて、その意思で向かっていくところのものが「幸せ」なのではないでしょうか(私は国語の学術や研究のスペシャリストではないので、いち言葉のユーザー、言葉おたくの個人的な見解としてお読みください)。

「しあわせ」はしばしば歌の主題になります。このように、おのれの意思はそれとして、その外側から舞い込んだり、おのれの意思を超越したところからおのれに影響を与えてくる甚大な存在からの作用、あるいは単に「偶然」みたいなものが「倖せ」のニュアンスに含まれうるとすると、「倖せ」の表記を選んで用いれば、そういう人智を超越したものへの畏れや敬い、それを受け入れる悟り・諭しを暗にほのめかせるかもしれません。他者とのつながりや縁がもたらす恩恵のようなものもこれに含めてもよいのかも?

他方、主人公……つまり僕や私やあなた、などの「主格」が、その意思によって至るべき理想とするところ……そこで享受したり築き上げる恵みのようなものを狙って描く場合は「幸せ」と表記するのも、使い分けとして然るべき理屈かもしれません。

理想に向かって行くには、個人の確固たる意思(≒「幸せ」のベクトル)がいるでしょう。それを何倍にも増幅するには、偶然にも得られる他者とのつながりや協調、舞い込むラッキーや偶然の危機回避(≒「倖せ」)が欠かせません。「倖せ」と「幸せ」は似ているようで違うようで、やっぱり隣り合った観念といいますか、隣接しつつも癒着・一体化したような「ひとつ」の観念であるともいえそうです。

ザ・ワイルドワンズの『小さな倖せ』は“二人でいるなら 倖せ”と歌っています。あなたの存在を前提に生まれる恵みなので、きっと「倖せ」なのですね。偶然あなたと出会わなければ生まれませんし、主人公も存在しなくてはなりません。ふたりがこの世に生まれ、偶然にも出会えて、そして一緒にすごすことが叶った。それは確かに、ここでこの歌がいいたいのは、「幸せ」よりも「倖せ」のほうがふさわしいのかも、とうなずきを与えたくなります。

青沼詩郎(GS大好き)

参考歌詞サイト J-Lyric>小さな倖せ

参考Wikipedia>小さな倖せ

THE WILD ONES OFFICIAL WEB SITE

「ザ・ワイルドワンズ」は1966年結成、命名は加山雄三さん。メンバーの加瀬さんは「スパイダース」加入歴があり、沢田研二さんのプロデュースもされたとあります。私の好むミュージシャンとのつながりが多いのに、一人うなりたくなります。

『小さな倖せ』を収録したアルバム『ザ・ワイルド・ワンズ アルバム』(1967)

『小さな倖せ』を収録した『ゴールデン☆ベスト ザ・ワイルド・ワンズ』(2011)

ご笑覧ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『小さな倖せ(ザ・ワイルドワンズの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)