あなたたちのための愛嬌
シャラララ、ララーリー……シンプルです。日本語の歌詞で親しまれてもいる『グリーン・グリーン』(ニュー・クリスティ・ミンストレルズ)を思い出します。童謡のようなのどかなメロディとパンチのあるリードボーカルのギャップに共通性を覚えます。「シャラララリー」の繰り返しやってくる、期待通りになる気持ちよさ。エンディングあたりにはすっとぼけたような補佐的なボーカルの高い声が入ってきてコミカル。エンディングはオルガンのリフレインとサンドイッチ構造でシャラララリーを反復しながらフェイドアウトしていきます。
エンターテイナーとしてもマルチに才能を発揮する人を作家に立て、確実に成功したい!という局面での本楽曲だったのかもしれません。本楽曲におけるその立ち位置・態度こそが、スモールフェイセスの歴史を終わらせた……という向きの評論も存在するようですが……
己の趣味嗜好の道をひた走る態度から、大衆に向き、大衆のためにものを演じる態度に地平を合わせることで得られる爆発力もあると思うと、私は個人的には自分自身の戒めにも思えてしまうところです。そしてそうした決断選択の積み重ねによって獲得する本曲『Sha-La-La-La-Lee』がふりまく愛嬌の大きさはプライスレスな価値だと思います。
本楽曲のB面曲『グロウ・ユア・オウン(Grow Your Own)』が強烈なガレージサウンドのインストになっていて、本人たちの趣味全開という印象です。かまやつひろしさんの『我が良き友よ』をこれに伴って思い出します。A面の『我が良き友よ』がかまやつさんの趣味の中央値をいくぶん外れる存在の大衆向け(?)の楽曲であるのに対して、B面曲である『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』は自分の趣味に沿う形の好きなようにやらせてもらった曲……といった趣、制作に寄せる意図もあるとか。その“ゴロワーズ”の方も(方こそ)後年に渡って、強烈な評価を得ているとも思うので、大衆に地平を合わせる態度と趣味全開の態度の双方を胸に抱き、己のなかで(あるいは外に出して)闘わせ、シーンによってはいずれかあるいは双方を全開に掲げ続けるバランスこそがそのアーティストの芯の強さ、燃え尽きない太陽のような恒常性につながるのではないかなと好意的にも思います。
Sha-La-La-La-Lee Small Faces 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Kenny Lynch、Mort Shuman。Small Facesのシングル、アルバム『Small Faces』(1966)に収録。
Small Faces Sha-La-La-La-Lee(アルバム『Small Faces』収録)を聴く
絶叫のボーカルのはりつめたテンションと熱量、しゃがれたフィールが圧巻です。
ヴァースの2小節のちの2小節に「シャララリー、yeah!」とつきます。サビじゃなくても、小さなサビが繰り返しやってくるようなお得感があります。2小節+「シャララリー、yeah!」の2小節=4小節の単位が歌い出しからすぐ4回繰り返され、おしりには追加で「シャララリー」2小節の念押しがくっつきます。これですよ。主題の“Sha-La-La-La-Lee ”、これ以外の何者でもない。シャラララリーってなんでしょう。ほとんど意味なんてないのではないでしょうか。ランランランララーラーとかでも良いはずです、意味のないという見地においては、例えばボンボンボンボンボボンビーでもパンパンパンパンパパンピーとかなんでも良いはず。
でもここはシャラララ……という流れるような清音であることが大事なんです。このボーカリストのホットでエッジーな声質でボンボンボボンビーとか言われてもクドすぎる。シャラララリーと、どこかきよぎよしい流麗な音声だからこそ良いのです。
ヴァースがもうコーラスみたいになっていて、”I held her close and I”……とのブリッジがあって、シャラララリーを含むヴァースのパターンがまた再現されます。あとは特筆すべきセクションはエンディングくらい。コンパクトで単純な楽曲構造です。
ズボン、グモグモ!と耳を覆う圧倒的なベースの質量。ジャキーンとリズムとコードのエレキ。
ピアノがぽろぽろと随所でこちょばす語彙を浮かべます。エンディングで初めてオルガンいたんかいという感じ。カウベルなんかがいいところで調子をとってくれます。シャラララリーを歌うときにあらわれるハーモニーパートのボーカルがコミカルで愛嬌を醸すリーダーです。
エンディング付近ではオルガンのモチーフにエレキのベンドが絡んで魅せます。
シャララ……という発声にやどるマジカルの正体はなんなのでしょう。「Shall I…」とかに聞こえるからなのか?ま、いっか。
スモール・フェイセスは、西のザ・フー、東のスモール・フェイセスといわれる、モッズバンドを象徴する筆頭です。『グリーン・サークルズ』というちょっと神秘的な魅力ある曲が好き。
青沼詩郎
参考歌詞サイト JOYSOUND>Sha-La-La-La-Lee
『Sha-La-La-La-Lee』を収録したSmall Facesのアルバム『Small Faces』(1966)