ゴールデンカムイと縄文ZINE
特にある時期、『ゴールデンカムイ』の名前がやたら聞こえてきた。野田サトルの漫画(2014年〜2022年、週刊ヤングジャンプ、集英社)。それがすごく話題になっていた。
最初は「へぇ、なんの話だろう」くらいに思っていた。名前にある「ゴールデン」は、上等な良いもの、輝きをはなつものといったイメージを導き、反面おおげさな響きも持っている。それから「カムイ」は……なんだろう、よくわからないけれど、東洋的で、こちらも歴史譚や英雄譚を思わせる響きだ。そのふたつの語があわさったタイトル、「ゴールデンカムイ」。アニメーションがあったので鑑賞してみたところ、私の心のゴールテープを突破。ハマってしまった。
ある時期、私は縄文時代に関心を寄せていた。きっかけはなんだったっけか……記憶も朧げだけれど、私の住む西東京市には「南関東一」と市も懸命に(?)アピールする縄文遺跡がある。下野谷遺跡だ。地元にそんな一等すごいものがあるから、いつ関心を抱いてもおかしくない状態に私はあった(いつまでも関心を抱かなくてもなんの不思議もないが)。
ふと縄文に興味が湧いたところで、『縄文ZINE』という遊んだタイトルのマガジンを作って発行してしまった愉快な人がいることを知った。それを取り寄せて読んでみる。そこには、縄文時代とアイヌを結びつける観点で図られた、『ゴールデンカムイ』作者の野田サトルの特集ページがあった。ここで冒頭の話とつながってくる。
縄文時代はとても長くつづいた。人々は狩猟採集のくらし。一方、アイヌも狩猟採集のくらし。そこに共通点を見出した企画がさきほどの『縄文ZINE』のゴールデンカムイを取り上げた企画だったと記憶している。
アイヌは縄文と共通点を見出せる狩猟・採集のくらしを、もっとも近代まで、しかもこの日本でしていた人たちなのだという論が紹介されていた。私の『ゴールデンカムイ』へ抱いた当初のリアクション「へぇ」は、「なるほど」「むむむ」「おもしろそう」と変わっていった。それで、冒頭にも書いたように、ゴールデンカムイのアニメを知ってしまった私につながる。
正直、私の関心事がつながっていった時系列はあいまいだ。ゴールデンカムイ、縄文、アイヌへの興味、その分野の探索・情報収集は並行していた。
eastern youth 〜未開催の夏フェスたちとYouTube〜
今朝、YouTubeを観ていた。夏、夏、夏。フェスの夏……のはずだったろうに、今年は新型ウイルスによる感染症まんえん防止の観点でどれも未開催となった(執筆時点:2020年)。
穴埋めといってはなんだが、積極的に過去のアーカイブを各フェスが発信しているように見えた。
そんな中で巡り会った動画がeastern youth。
サムネイルの、パッカリと開いたボーカルの口、メガネ、スキンヘッド。絵面がばっちりすぎる。意識が飛びそうなインパクト。
泥臭い歌が良い。多動すぎる狂ったようなベース……女性だったのか。朴訥としたドラムスも良い。eastern youthの名前や存在は認知してはいたが、恥ずかしながら、スリーピースバンドだったとここで知る。
彼らの音楽を私が意識する最たるきっかけをくれたのが、アニメ『ゴールデンカムイ』のテーマソング『時計台の鐘』(2018)。
こちらもやはり泥臭くて熱い。好きだ。私の語彙が陳腐で申し訳ない。ごく実直に、カッコイイなと思うのだ。
私の中での存在が徐々に大きくなるeastern youth。今朝は私の前に2018年のフジロック出演時のライブ動画『夏の日の午後』(『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』収録、1998年リリース)で現れてくれた。なんて素敵な私の午前中。
「ボイス」担当の吉野寿、ドラムス田森篤哉は北海道出身。なるほど、ゴールデンカムイへの起用動機の一端が見えた気もした(もちろんほかにもあるだろう。関係者がファンだとか? 両思いだったりするかも?)。現ベーシストの村岡ゆかの加入は2015年。バンドの結成は1988年、札幌とのこと。
eastern youthの近況
eastern youthは2020年8月19日、アルバム『2020』をリリース(2020年。数字の通り)。収録のトップソング『今日も続いてゆく』MVが公開。彼らのアルバムリリースは2017年『SONGentoJIYU』以来か。
青沼詩郎
裸足の音楽社(eastern youth)
http://www.hadashino-ongakusha.jp/index.html
eastern youthのアルバム『2020』
eastern youthのシングル『時計台の鐘』(2018)
『縄文ZINE(土) 』(2018)
『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』(2019、集英社新書)。『ゴールデンカムイ』を側車にアイヌ文化を案内します……という感じの良書。
漫画こぼれ話 ゴールデンカムイの完結
2022年7月19日発売の31巻で『ゴールデンカムイ』が完結。作中、退役軍人の杉元は、協力関係にあるアイヌの少女・アシㇼパにある種の配慮をかけ続ける。その配慮は、ふたりの本当の相棒としての最も強い結びつきに対して一線を引く配慮でもあった。最終巻ではその一線の超越に等しい場面が描かれ、二人が本当の相棒として最も強い絆を獲得するのを私は感じた。細やかでニュアンスに富んだ人物の描き分け、漫画の技法の妙も相まって私は感涙した。脱糞王(脱獄王)・白石由竹の結末も痛快で最終コマまで笑撃である。単行本限定でつくエピローグにも震撼。ノンフィクションの史実を下敷きにした傑出のエンターテイメント作品の大団円に万感である。
野田サトルの漫画『ゴールデンカムイ』(連載:2014-2022年。単行本全31巻)
アニメ『ゴールデンカムイ』(第1期:2018年)