Get Back The Beatles 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Beatles with Billy Prestonのシングル(1969)、The Beatlesのアルバム『Let It Be』(1970)に収録。

The Beatles Get Back(『Past Masters』収録、2009 Remaster)を聴く

まっしぐらに行進していく「タッタカタッタカ……」のリズム。マーチングバンドの足取りを思わせます。実際に高校生だかローカルのアマチュアブラスバンドだかがこの曲を演奏するのを観た記憶があります。マーチングではなくホールでの定期演奏会か何かでしたが……詳細はともかく、それくらい一般に浸透しているビートルズナンバーの一つなのです。

じわじわと熱をあげていく。各パートの演奏のダイナミクスのメリハリが良い。「タッタカタッタカ……」と平熱で行進していくのですが、4小節に1回のまとまりでガードレールだか障壁だかを飛び越えるみたいにキメがつき、そこに演奏のアクセント。ほぼコード進行はAとD(ⅠとⅣ)の繰り返しですが、この4小節に1回のアクセントのところにG→D(Ⅶ♭→Ⅳ)的な上声進行がいるように感じます。それぞれ1拍ずつの長さなので一瞬なのですけれど。

Get Back、カタカナで書いてしまえば「ゲット・バック」と濁音の効いた強い響きですが、楽曲の前半のポール・マッカートニーの歌唱は非常にソフトで柔和です。ポールの歌唱表現の幅広さときたらつくづく魔術師じみた変幻ぶりです。低い音域でメンバーが「Get Back」のフレーズをレスポンス。バンドにメンバーがみんな戻ってきたぜ/戻ってやったぜという団円が宿ります。でも、これみよがしな感動の大団円とかではない……あくまでその時、刹那のメンバーのバイオリズムが図らずもようやく重なったか、やれやれ……ここらでもう一度ふざけ直してやるか! という奇跡めいた波長の重なるセッション。自由の行使こそが礼儀で流儀なのです。

そこにビリー・プレストンも参加して、完全にオリジナルバンドに馴染んでいます、これがすごい。転がるように鍵盤の上を踊ります。目指す音に向かって確実に経過的な装飾を逐一つけていくので、本当に「転がっている」、笑い転げているみたいなプレイです……それでいてステージから落っこちることがない。パフォーマンスとしての円滑な回転よ。

バンドのキャリアの最終期につどって、またそれぞれの道を行くまえのハイタッチかよという果敢なセッション。んで、また再再集合! (再再再再……?)というあったかもしれない奇跡に向かってゲット・バック。(ゲット・フォワード?)

青沼詩郎

参考Wikipedia>ゲット・バック

参考歌詞サイト KKBOX>ゲット・バック – Remastered 2009

ザ・ビートルズ ユニバーサルミュージックサイトへのリンク

シングルバージョンの『Get Back』を収録したThe Beatlesのアルバム『Past Masters』(1988)

アルバムバージョンの『Get Back』を収録したThe Beatlesのアルバム『Let It Be』(1970)

参考書

ビートルズを聴こう – 公式録音全213曲完全ガイド (中公文庫、2015年)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Get Back(The Beatlesの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)