手のひらで転がすたまねぎ
フラットした音程を多用した歌のメロディ。メロディが含むリズムは比較的愚直な傾向があり、ビート重視でじとっとした攻撃性を感じます。負の感情の重みを意図したかのよう。コードづかいも不穏でひねくれています。短いまとまりの音楽センテンスや比喩や暗示に満ちた歌詞のコラージュ総体で圧力描写を試みているように思います。リスナーを幻惑する……串を通させてくれないひねくれた態度を感じるのです。
歌詞にはstrawberry fields、walrus、Lady Madonna、fool on the hill、Fixing a hole、などビートルズの作歴を直接的に思わせる語彙が数多ならびます。楽曲の意図、込められた意味に串を通したがるリスナーの鼻先に餌の着いた針を放る釣り人のごとし。
主題のGlass Onionはなんのことなのでしょう。片眼鏡のことだとの解釈もあるようだとか、あるいはそれ以上の広がりをもつ比喩・暗示でしょうか。透き通ったものをイメージさせます。まなざし、観察の透明さへの啓示なのか、あるいは透明で実態(意味)のないうすっぺらさをあざわらう解釈も立つような気もします。Onionにしても、剥いても剥いても似たような面が出てくるばかりの滑稽な特徴をもつ野菜であるとナナメな見方をしてみれば、それもやはりなにがしかの痛烈な皮肉なのかもしれませんし、こんなふうにあれこれ考えて翻弄されている時点でジョンの掌の上で踊らされている私なのかもしれません。
Glass Onion The Beatles 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Beatlesのアルバム『The Beatles』(1968)に収録。
The Beatles Glass Onion(アルバム『The Beatles』収録、2009 Remaster)を聴く
楽曲の構造自体はシンプル。ヴァースに、Bメロといいますか歌詞サイトのGeniusをみるとRefrainと表記されるパーツがきます。「Oh, Yeah..」のところがBridgeとされていますね。
左のブリッブリの音質のベースが凶悪です。右にドラムが泣き別れ、タンバリンが重なっています。ピアノもドラムの近くにあらわれ、場所によってボーンと乗ってサウンドに厚みを加えたり、要所でグリッサンドによるアクセントを添えます。エレキのオブリは中央〜やや左寄りに感じられます。ビートルズらしい歪んだ音です。ジョンのボーカルのダブルのサウンドが幻惑感を強めます。君の本体はどこにいるの?という違和感が私を惹きつけるのです。フール・オン・ザ・ヒルを思わせる歌詞のところでぽっぽっぽっぽー……と急に幼稚になったみたいな音色のリコーダーが出てきます。
ダブルカルテットがフィーチャーされていて、警鐘を鳴らすような不穏な印象を増長する一因になっています。エリナー・リグビーにも通ずるサウンド面の特徴、ビートルズの「型」の一つでしょう。エンディングにはぶつぎりになったテープを唐突につないだようなストリングスのみの展開がつきます。だんだんリタルダンドして、脳髄がとろけてしまいそうです。ヘッドフォンでおしりまできっかり聴くと、音程までテープがヨレるみたくゆがみ、そのまますかさずオブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダがはじまります。このエンディングはなくても楽曲自体の成立を覆すアイデンティティではないと思いますが、これがあるからビートルズはヘンテコ革新グループなのです。私を幻惑する、「君は一体なにをかんがえているんだい?」という気になり感はこういうビートルズの意匠面にもよるところが大きいです。
青沼詩郎
参考Wikipedia>グラス・オニオン、ザ・ビートルズ (アルバム)
ザ・ビートルズ | The Beatles ユニバーサルミュージックジャパンサイトへのリンク 2026年はビートルズ来日60周年記念。
『Glass Onion』を収録したThe Beatlesのアルバム『The Beatles』(1968)
【参考書】
ビートルズを聴こう – 公式録音全213曲完全ガイド (中公文庫、2015年)