世界の民謡・童謡>グリーングリーン 歌詞の意味・和訳 ある日パパと二人で語り合ったさ 原曲はパパではなくママ?

こちらの参考リンクから話を始めてみます。

原曲の、ちょっとぶっきらぼうな主人公を思わせる言葉のタッチ。ですがその本質は野心や理想に忠実で行動的な人格であるのがよく表現された原曲に対する訳詞になっています。

片岡耀さんの日本語詞は忠実な対訳(直訳)でないことを片岡さんご本人が語った教育芸術社の公式サイトのインタビューを引用して述べています。また「ママ」よりもパパが楽曲に登場する頻度が少ないことを作詞のきっかけにしていることも併せて述べています。

「ママ」の曲が多いのはおっしゃる通りだと思います。パパだけを扱った楽曲はすこぶる少ないのでは。どちらか一方を出したら、もう一方も登場させてバランスをとる楽曲が多いことを想像します。

日本語詞については私は、パパは戦争に行ってしまうのだと思うのがしっくり来ます。胸熱で、悲しいのだけれど、歯をくいしばってがんばって生きたくなります。『とんでったバナナ』でも展開の豊かな作詞をみせる片岡輝さん。テレビ関連のお仕事をたくさんされた方のようです。楽しいものが広く伝わるための手法やアイディア、そのためのスキルをたくさん持っている有能な方であるのを作詞の作品を通して痛感するところです。

Green, Green(The New Christy Minstrels)を聴く

作詞・作曲:Barry McGuire、Randy Sparks。The New Christy Minstrelsのシングル、アルバム『Ramblin’』(1963)に収録。

童謡として歌本に載っているので楽曲『グリーン・グリーン』を認知したのが私が小学生くらいの頃。今になってThe New Christy Minstrelsの原曲を知り、ぶっ飛ぶのはメインボーカルの彼の粗野(最高の称賛の意味で)な歌唱。冒頭のリンク先の記事にある翻訳が表現するワイルドな感じの人格は、The New Christy Minstrelsのオリジナルパフォーマンスや当時の時代や情勢、世界的な機運を汲んでのことでしょう。

とにかくカッコイイ、ワイルドなボーカル。これはカバー(輸入、インポート)したくなります。はっきりと波状にやってくるコーラスとヴァース。3コーラス目で“Easy now”と掛け声、コーラスも優しくなり、繰り返しで“きかせてみろ!”とばかりに煽りパワフルにコーラスしてフェイドアウト。群衆の希望への旅は続きます。

ドラムスが独特なグルーヴ感でプレイしていて、ベースがツボを押さえたストローク。アコギは右で裏打ち。左では複弦のアコギが綺麗な上行のオブリガード(希望や理想へ向かう高揚感や意志を感じます)を唱えます。この絶妙な「異なるグルーヴ感覚」の同居が最高に気持ちの良いバンドの合奏になっています。

左右に音場を広げる、バックグラウンドボーカル(コーラス)。シンガーごとにはっきりと定位が振ってあるようです。ヴァースでメインをとる彼とは正反対な、みずみずしく青青とした声で歌う複数のボーカルが世の人、群像の象徴に思えます。

グリーン・グリーン(杉並児童合唱団)を聴く

編曲:小森昭宏

NHK『みんなのうた』で1967年4〜5月に放送。

まるでサーフロックやGSみたいです。パカスカと軽快なドラムス、その演奏タッチやパターン。ピチピチとアンプのスプリングやピックのアタックが弾けるギター。こうした要素で、カバーされた時代が強調されます。発表年を検索してみるに、ずばり日本でもそうした音楽が大変人気があった時代だと思います。タイガース、スパイダース、ワイルドワンズ、サベージ、それに加山雄三さんとか……『みんなのうた』にもそうした時代性があらわれるようです。

原曲より長いコーラスで物語していきます。右や左に、ヴァースのメインボーカルがソロで振られていたりします。みんなでヴァースを歌う番も含まれています。物語の進行の表現に起伏を与えますね。どんどん転調していって終始緊張感を保ちます。勢いと熱のあるバンドのベーシックと児童合唱、それに木管アンサンブルをかけあわせたサウンドは非常に独創的で個性的。こういうバランスのものに巡り合うことは稀であることに感謝したくなります。編曲の小森昭宏さんの経験知や手技が注入されているのか。『黒猫のタンゴ』、童謡や合唱、テレビ音楽など多様な実績のある方です。

後記

なにげなく出会ったのち、じっくりその意匠を眺めたり思いを馳せたりすることなくすれちがってきた童謡などにも奥深い作品が多くあります。海外のものを日本に持ってくるなどすると、そのぶんコンテクスト……文脈も増え、複雑になります。何十にもコンプレッションされたり付加・減算を繰り返され、抽出加工を経た音楽の表層とその起源の振れ幅に、鑑賞の醍醐味を覚えます。

青沼詩郎

参考Wikipedia>グリーングリーン

参考Wikipedia>The New Christy Minstrels

The New Christy Minstrelsの『Green, Green』を収録したアルバム『Ramblin’』(1963)

杉並児童合唱団の『グリーン・グリーン』を収録した『NHKみんなのうた 名曲100歌 1961~1970年の思い出の歌たち』(復刻盤:2021年、オリジナル発売:1971年)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Green, Green(The New Christy Minstrelsの曲)ウクレレ弾き語りとハーモニカ』)