音楽である衝撃

ドドンパと聴くと私が思い出すのは2点。

1点はチャオズ(餃子)君です。ドラゴンボールという鳥山明先生原作の漫画(あるいはアニメ)に出てきた必殺技(ピクシブ百科事典へのリンク)で、チャオズ君はその使い手です。「どどん波」とつづります。「かめはめ波」より細っこいイメージなのですが、それだけに突貫力がありそうな結構ヤバい技だったような気がします。

もう1点は早川義夫さんの楽曲『アメンボの歌』の歌詞で、泣いてすがれど甲斐はなく 破廉恥な年貢がドドンパドンというフレーズが出てきます。すごいフレーズですね。桑田佳祐さんの作詞作曲です、の一言で深く納得がいくのでつくづく桑田さんは稀代の変態作家(褒めてる)だと自己完結します。

早川義夫のシングル、アルバム『恥ずかしい僕の人生』(1997)に収録。2分13秒〜あたりが当該のフレーズです。

ドドンパを疑いなく受け入れていた私。オノマトペだと思っていました。意味はないものと。

美空ひばりさんの幅広いレパートリーに着目するのも音楽の宇宙を漂う巨大な楽しみのひとつですが、彼女の楽曲に『ひばりのドドンパ』があります。

美空ひばりさんは『ひばりのチャチャチャ』なる楽曲もあり、

チャチャチャも擬音語っぽいですが『おもちゃのチャチャチャ』という有名な楽曲もある通り、ダンス・ミュージックとしての”チャチャチャ”を指しています。手拍子やカスタネットを打つ擬音語っぽいので、初めて“チャチャチャ”がダンス・ミュージックの名詞“チャチャチャ”とオノマトペあるいは「おもちゃ」という名詞の脚部を反復する韻律のダブルミーニングになっていると気づいたときは衝撃でした(あるいは手拍子の擬音を含めたトリプルミーニング)。

『ひばりのチャチャチャ』がそうして、厳然たる(いえ、もちろん気軽に親しみたいですが)ダンス・ミュージックをフィーチャーした作品であるという手がかりからして、『ひばりのドドンパ』もただのオノマトペだとか、発音の響きを重視しただけの出鱈目な架空の語句なわけはないはずなのです。

検索して初めて知りました。ドドンパも厳然たる(いえ、もちろん気軽に以下同文)ダンス・ミュージックのいちジャンルの呼称(Wikipediaへのリンク)です。ほんとにいろいろあるんですね。チャオズ君のドドンパ(どどん波)をくらったような衝撃です。

ひばりのドドンパを聴く

作詞・作曲:米山正夫、編曲:松尾健司。美空ひばりのシングル(1961)。

美空ひばりさんの楽しそうなこと。途中ちょっと笑ってしまいながら歌っているように聴こえます。演奏者のあいだでなにかあったのでしょうか。目配せが交うレコーディングの様子を想像しますが、美空ひばりさんのことですから笑ってしまうくらいに楽しい様子の「表現」なのかもわかりません。

笑ってしまうくらいのリズムの強調が2拍目になされています。スネアと、それから「ポン」っと空気がはじけるような音を感じるのですがなんの楽器でしょう。卒業証書なんかがはいっている筒(マーブルチョコとかでも良いです)をポンと鳴らして蓋を外したみたいな音が混じっている? わかりません。

低域のブラスがサウンドの要。トロンボーンなどでしょうか。途中男声のBGV(バックグラウンドボーカル)も入ってきます。ひょっとして作詞作曲の米山正夫さんだったり編曲の松尾健司さんが加わったのかなと想像しますが実際はどうか。

2拍目を強調すること、そして1拍のなかで頭が重く、後半は短い、つまりシャッフルしたタッカタッカと1拍の中の重みに揺らぎのあるビートがドドンパの特徴のようです。

ラテン・パーカスも奥のほうで地固めをしています。コンガでしょうか。モノラル音源っぽくて定位の左右感はありませんが前後感がすばらしい。明瞭に収録したラテンパーカスはパカパカとけたたましい仕上がりの音楽作品も多いですが、『ひばりのドドンパ』では非常に暖かです。画用紙の表面の質感みたいに美空ひばりさんの歌を載せるオケ。歌とオケと全部一発録りしたのでしょう。時代的にもおそらくそういう手法(しかなかった)かと思います。笑い転げてしまいそうな美空ひばりさんの歌の楽しい雰囲気も、大勢で音をドドンパっ!と合わせるからこその生命感です。

2拍目の強調が強烈過ぎて笑ってしまったのかなとちょっと想像します。これぞドドンパなんですね。インストールしました。

“どんなことでも ドドンと一発 体当り 体当り ドドンパ ドドンパ ドドンパッと来て ドドンパ”(『ひばりのドドンパ』より、作詞:米山正夫)

大勢を従えて、生演奏でバシっと決める美空ひばりさんの華と技量、あるいは個々の音楽製作者やすべての演奏者のそれのかけ合わせがドドンパ一発の躍動感を生む構図をそのまま伝える歌詞が楽しげ。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ひばりのドドンパ/車屋さん

参考歌詞サイト 歌ネット>ひばりのドドンパ

『ひばりのチャチャチャ』『ひばりのドドンパ』ほかを収録した『ミソラヒバリ リズム歌謡を歌う! 1949ー1967』(2006)