I think I can the pillows 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:山中さわお。the pillowsのシングル(2000)、ベストアルバム『Fool on the planet』(2001)に収録。
the pillows I think I can(『Fool on the planet』収録)を聴く
端から端までかっこいい。イントロとエンディング、こういうのなんていうスタイルの音楽というのでしょう。スペインとかポルトガルとかそういう感じなのか、フラメンコギターなのか、そんなような土着臭を感じさせるギターモチーフ。何がはじまるものか、強く印象づけます。
バッサリと切り替わってタムの轟音とともにバンドが現れます。左右のギター。べースの質量感と自由な浮遊感。ドラムのキックはゴムゴムとアタックと鳴りの芯のバランスがありスネアはダカダカと騒がしいプレイとサウンドが最好。
右のギターはリズムしつつも時折自由にせりあがったりカウンターするようにチョーキングしたりしてしゃべっているみたい。ボーカルに合いの手します。
サビでオクターブ奏法でコードチェンジごとに音程がせりあがっていきます。シンプルですがエンディングに近づくほど熱量を増し終いにはトレモロピッキング。左にはファズの効きすぎたピーとエッジと図太さのあるもはやシンセのような人工臭さえ感じる歪んだ音が加わって圧力を増し、ドラムのシンバルがラストのサビのリフレインで2・4を強調し始めます。エンディングのフラメンコギター(?)みたいなコードはオープニングと同型ですがコードがトニック中心(Aコード)になっている・トニックに着地する「小違い」があります。オープニングは実はドミナント中心(Eコード)だったと気づきます。
何も言わないで
出ていったキミ
簡単な置き手紙は
ドアに刻まれてた
‘I・C・A・N’
I think I can
I think I can
I think I can
かけがえのない
夢を知っちゃって
もう絶対ごまかせないんだ
寝ても覚めても繰り返す
‘I・C・A・N’
『I think I can』より、作詞:山中さわお
僕は、君ならできると思ってるよ。そういう、君の背中を見守り、心のなかで応援する構図を思うのですが、実はここで登場するキミって、主人公の写し身といいますか、実は主人公もキミもひとつの肉体に住んでいる人格なのじゃないかと思わせます。the pillowsの楽曲の多くに私が感じるのは自尊心です。
I think I canは直訳すればオレは出来る! でしょうが、キミはデキルと俺は思うぜ! というのとほとんど同義なのじゃないかと思わせるのです。なぜなら、「キミ」自体が、主人公が自分自身を客観した人格であるという読み筋を私は感じるからです。
似ても似つかない
双子のキミ
どうしたんだい
靴紐さえ
ほどけっぱなしのまま
うわの空
待ち構えてる
ハイエナのキス
間一髪
誰の目にも
およそ不可能なBET
楽しみたいな
I think I canI think I can
I think I can
『I think I can』より、作詞:山中さわお
そんな私の、キミも主人公もひとつの肉体に棲む人格なのじゃないかという勘ぐりに手を差し伸べてくれるワードが「似ても似つかない 双子のキミ」。双子なのだけれど、それが信じられないくらいに極端に違うこともある。一人のなかに、それくらいかけ離れた人格が同居することも十分ありえるでしょう。挑戦する野心家。常に自己破壊と革新を求め、挑戦をつづけるキミと、それを客観する主格を対比すれば、複数の視点がひとりのなかに宿るのは至極自然なことです。
鬼が出るか蛇が出るかハイエナが出るか。どうせなら全部出てきやがれ。楽しんでやるからよ!
宣言通り、主人公とキミなら何が出ても楽しんでくれるに違いないと思わせます。
青沼詩郎
『I think I can』を収録したthe pillowsのベストアルバム『Fool on the planet』(2001)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『I Think I Can(the pillowsの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)