君はTVっ子 THE BOOM ヨダレ滴るモニター依存

テレビにぞっこんの君を描きます。今でいうならスマホ中毒でしょうか。七色に変わる宮沢さんのリードボーカル、タイトで鋭いバンドの精緻な演奏。モニター画面からこちらに溢れ出してきそうな勢いある曲調が表現されます。

テレビっ子(君)は自分自身の写し身ともとれます。“僕自身” の悪癖を払拭するためなら僕は身投げ(空から飛んでも)したり毒薬飲んだりして命を捧げても許容である……と読み解けば痛快。自己あるいは個人を含む集合体としての社会とその瞬間の情勢・時事を、持て余さんばかりのエネルギーで風刺する態度が最高にトガっていて気持ち良いのです。

君はTVっ子 THE BOOM 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:宮沢和史。THE BOOMのシングル、アルバム『A PEACE TIME BOOM』(1989)に収録。

THE BOOM 君はTVっ子(アルバム『A PEACE TIME BOOM』収録)を聴く

メンバーの頭数で再現できる勢いある演奏を基盤にしつつも、テレビのチャンネルがいりまじるみたく演奏のパターンやニュアンス、アレンジの妙で豊かな景色をみせてくれます。モニター画面の前にいるだけの僕を世界中に連れていってくれる窓。THE BOOMが私の船でありチャンネル、局みたいな存在でもあるのです。

君はテレビに夢中……愛しのあなた……とハイトーンに抜ける。鼻ピクピクさせて……とわざとベッタリイヤらしくする。宮沢さんの歌唱の、リスナーを煽るようなやりすぎなくらいな極彩色ぶりがtoday’s 放送 is over…といったテレビの七色の垂れ幕みたいにけんもほろろ。

スネアをタッタカタッタカさせたかとおもえば最後のサビでは明らかなバイテン(Double Time Tempo)、ベースも低層フレットから上階の床を拳で貫かんばかりに動きまくるパターンに変化させる最後のサビに至る圧巻。エレキギターのアップストロークも刺激的です。

ドラムが巨大な空間を支配するみたくフロアタムが右に、ハイ・ロータムが右に開きます。ところによりティンバレスのようなタイコが甲高くファットな胴の響きでアクセント。

間奏のエレキギターソロからブルースフィーリングになりハーモニカソロ。左にぬるぬるとスライドギターが寝ぼけまなこでただよいます。曲中、左定位の情報が多めで右があいているセクションが多いですがサビになると右定位にぱんころぱんころとスピーディな指さばきのバンジョーがせせこましいテレビの流れを表現するよう。

イントロに「ソー・ド#ー・ラ#ー・ファー・ミー………」とおもいきり不穏の予兆の重苦しいピアノのモチーフ。この謎は曲中に回収されます。間奏明けのAメロセクション、歌詞が“僕が車にひかれた事件を”につづく“あの娘は「6時のニュース」で知った”の部分に注意して聴いてみてください。イントロで提示されたピアノモチーフが再現されます。悪いニュースのお時間です……と、告げるためのジングルだったのです。でもテレビは時間さえくればどんどん次の中毒的なコンテンツをあの娘の眼に流し混んで、ぼくの身に起こった不幸な報(しら)せをすぐに流下させてしまうのでしょう。車に轢かれてもダメなら次は空飛んでやろうか? 毒薬飲んでやろうか? もうテレビ画面にホームラン級のフルスイングをぶち込んでやりたいよ……テレビばかり見ている人、という状況の打破のために気分を煽られるのです。ああ、もやもやする……そんな想いが本曲の突き抜けるスピードと空も飛べそうな跳躍の原動力になっているのかもしれません。

青沼詩郎

参考Wikipedia>君はTVっ子A PEACETIME BOOM

参考歌詞サイト 歌ネット>君はTVっ子

宮沢和史オフィシャルウェブ Kazufumi Miyazawa Official Webへのリンク

THE BOOM | ソニーミュージックオフィシャルサイトへのリンク

『君はTVっ子』を収録したTHE BOOMのアルバム『ア・ピースタイム・ブーム』(1989)