夢といいつつ現実で
さわやかな垢抜けたバンドのサウンドをバックに、来生たかおさんのクールなのだけれど声の響きのポジションでちょっと達観したような平静な理性的な人格を感じさせる歌唱がノリます。
来生えつこさんの歌詞と来生たかおさんの曲による作品ですが、歌詞の内容がちょっと色っぽい。こういう内容を弟に歌わせてみたいなどと思って作るのでしょうか、などという私の邪推をくすぐります。
夢を題材にしていますが、リアリティ・シズル感があります。『浅い夢』の代表曲もあるくらいで、夢モチーフは来生さんに必勝をもたらすのじゃないかと思えるバフ効果を勝手に感じてしまいます。
歌詞の嵩をはやばや消化してしまったのにまだ収録時間が残っている……?と気になりながら聴いていると、一度フェイドアウトしてから復活してシャッフルビートのちょいワルな、ちょっと刺激的な後奏がエンディングにつきます。私の邪推ですけれど、色っぽい夢をみて、うっかり寝言とかでその色っぽい夢の中での相手の名前などを無意識に口にし、起きた後で傍で寝言を耳にしていた現実のパートナーから「××(夢の中の相手の名前?)って誰よ?」などと問い詰められたのでしょうか……などと私の妄想をくすぐるエンディングです。
歌詞のアクセントに「昔のバルドータイプ」との表現があります。フランス出身のブリジット・バルドーという女優さんのことを指すそうで画像検索すると盛った髪やはっきりした顔立ちに華のある肖像がヒットします。「ほどよく乱れた髪」と形容したくなる雰囲気がなんとなくわかる気がします。
夢の肌 来生たかお 曲の名義、発表の概要
作詞:来生えつこ、作曲:来生たかお。来生たかおのアルバム『Sparkle』(1981)に収録。
来生たかお 夢の肌(アルバム『Sparkle』収録)を聴く
非常に颯爽とした印象で、自分の歩調のペースを上まわる速度で快楽が暴走してしまうみたいなスリルを感じます。夢ならではですね。アコギのちゃきちゃきとしたストラムを右トラックに、左に振ったパーカッションがちくちくとサウンドにメリハリをあたえます。
エレキギターのオブリガードが伸びやかで歌詞があるところでは独特の下行音形を添えます。間奏をリードするのもこのエレキギターで、歌詞のない間奏部分が「夢」の質感を雄弁しますが本曲の主題はそもそも『夢の肌』、ABセクションと同質の時間の延長上に感じられる間奏です。
エンディングでフェイドアウトで遠くなってしまいそうなところに、次の展開のトリプレットの分割を心得たドラムのフィルをきっかけに曲調が一変。荒波が浴槽の中でもんどりうっているような曲調になります。べらんべらんとぎらつくベースのサウンドですが、何気にこのエンディングに突入するまえ、通常時からベースのサウンドはべらべらぎらぎらと黒光りしていましたからこの展開の預言者だったのかもしれません。
セルフカバーがある アルバム『ひたすらに』(2011)収録
ソフトなみみざわりでゆったりしたテンポ。このセルフカバーを聴いたあとでオリジナルバージョンを聴き返すと、オリジナルバージョンがテンポが早すぎるような気がしてあわあわしてしまいます。夢の肌を振り返るような余裕が持てるアレンジです。エンディングの修羅場展開はなく、ゆったりしたテンポであるがオリジナルバージョンと収録の分数は比較的近いサイズにおさまります。
青沼詩郎
参考Wikipedia>Sparkle (来生たかおのアルバム)、ひたすらに、ブリジット・バルドー
『夢の肌』を収録した来生たかおのアルバム『Sparkle』(1981)。『Goodbye Day』も入ったアルバムです。
セルフカバーバージョンの『夢の肌』を収録した『ひたすらに』(2011)