『君をのせて』

宮崎駿監督のアニメ映画『天空の城ラピュタ』(1986)。その主題歌が『君をのせて』。1986年は私の誕生年でした。同い年。

作詞:宮崎駿、作曲:久石譲(本編音楽も担当)。歌は井上あずみ(『となりのトトロ』のオープニング『さんぽ』エンディング『となりのトトロ』の歌唱も担当)。

https://youtu.be/oa9y4HbNKcw

2拍3連のオープニング。木琴風のサウンド。倍音が強い小口径のベルのようなサウンド。エレピサウンド。

歌メロがなんともいえない美しさを醸しています。

他の人からも、メロディのなんともいえない美しさを訴える声を聞きました。

その秘密? かもしれない要素に気付いたことがあるのでここでお伝えします。

調和のヒラウタと緊張のサビ

それは、ヒラウタ(A・Bメロ)での、ベースとの関係が3度になる音程の多用です。

3度という和声音程(同時に鳴る複数の音の距離)は、調和を感じさせます。3度は転回すれば6度。

この曲のヒラウタでは、特に小節のアタマ(コードチェンジ時)できっかり、ベースとの関係が長短の3度の音程になる関係を多用しています。

調和したこの響きは、安定感落ち着きを演出します。つまり、しっとりしっぽりと聴かせ、ドラマのハイライトの前置き、背景や情景を自然に語ってサビにつなぐのに適しているのです。

それに対してサビ(「♪とうさーんがー」以降)では、小節のアタマやコードチェンジ時にベースと歌の関係が3度や6度になるのを控えています。用いているのは、同度5度セブンス。ワンフレーズの出口となる、“♪あつーいおーもー【いー】”【いー】の部分のみ3度になる音を採っています。サビ折り返し前の出口だけは安定させているのですね。巧妙!

ベースとの関係が同度(1度、8度)や完全5度になる歌メロは、調和しすぎてかえって空虚を感じさせます。空虚ゆえに不安感緊張感を生みます。これがせつなさエモを感じさせる作用もあると思います。調和のヒラウタと緊張のサビが、見事な対立を成しているのです。

これが、私やあなたに「なんともいえない良さ、美しさ」を感じさせるこの曲の歌メロディの秘密…かもしれません。

マイブームの短調

最近私は『ゲゲゲの鬼太郎』、『益荒男さん』(くるり)、『ちいさい秋みつけた』に触れました。いずれも短調の旋律を有しています。そのえも言われぬ美しさ、きゅんとする怪しくスパイシーな響きにはまってしまって、近頃の私は短調の曲を蒐集し始めた始末。『君をのせて』も、そのせいで目に止まりました。

起承転結「転」?!

久しぶりに曲の全容をあらためて聴きました。ほとんど記憶にとどめているのですが、エンディングだけ、「こんな感じだったか」と認識をあらためました。主音の低音上で、上声部を2度ずつ上行させて緊張感を高め、さらに低音ごと上行したⅡ♭メージャーを経てⅣメージャーでフィニッシュという以外な展開。ハッとしました。

原曲のキーはE♭マイナー。このエンディング部のコード進行を書き出すと【E♭m→F♭/E♭→G♭/E♭→F♭M7→A♭】ですかね。(読みづらかったら全部♭をとって理解してくだされば。)調和と緊張のヒラウタ&サビののち、フィニッシュでどこへ行ってしまうのか?! 想像をふくらませるエンディングです。起承転結に「転」を付加した感じですかね。

青沼詩郎

井上あずみ『君をのせて』を収録した『スタジオジブリの歌 -増補盤-』
『天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎』

ご笑覧ください 拙カバー

青沼詩郎Facebookより
“短調の曲がマイブーム気味。短調短調言ってたら短調の曲がより自分の意識に引っかかるようになってきた。幼少期からテレビで繰り返し放送される『天空の城ラピュタ』にふれてきた。そのたびに必ずふれるこの曲。曲のほとんどを記憶にとどめているのだけれど、ハッとするエンディングのコード進行こんな感じだったけと改めて井上あずみが歌う音源を聴いて認識した。作詞:宮崎駿、作曲:久石譲。映画の公開は1986年8月。私の生まれた年の夏。同い年でしたか。”

https://www.facebook.com/shiro.aonuma/posts/3413679305392386