童心の私のヒーローのひとつが、L’Arc〜en〜Ciel。
私には5歳上の兄がいる。
彼はまめに、日本のヒットチャートを1位から10位まで全部借りてきてカセットに落とす活動にいそしんだ。当時の兄が中〜高校生くらいだった頃なので、私はその5歳下だったから小学生だった。
兄はなかでもCHAGE&ASKAが好きだったようで、4枚組くらいのボックスセットを持っていた。当時の私の目にはたいへん貴重なものに見えた。
そうやって兄がまめに仕入れてきていた音楽の中に、L’Arc〜en〜Cielがあった。『DIVE TO BLUE』『winter fall』など縦長ジャケットの8センチシングルが家にあった。それを借りて、私は直接CDを再生するか、MDに音楽を移して楽しんでいた。ちょうどそれくらいの時期に、カセットからMDへの記録媒体のうつろいがあったのだと思う(今では逆にMDよりもカセットが生き残った印象)。
中学生くらいになると、L’Arc〜en〜CielのCDを自分で買った。同じくらいの時期、私はエレキギターを始めた。それより前からピアノをやっていて、音楽はギターうんぬん以前に好きだったけど、同じ塾に通っていた、小学生の頃からの友人の熱心な誘いに乗ってギターも始めた。彼はB’z、特に松本氏の大ファンだった。
中学に入って、私にはB’zファンの彼とは別にギター仲間ができた。そちらの彼と一緒に、いろんなJポップソングをやった。その中に、L’Arc〜en〜Cielの曲もあった。原曲はバンドなのに、よくコンビでやった。
中でも思い出深いのが『STAY AWAY』だった。これは、中学校の卒業パーティで演奏した。会場は中学校の音楽室だった。そのときは仲間を増やして、バンド編成でやった。私はドラムを叩いた。吹奏楽部のない中学校だったから、ドラムは搬入した借りものだった。楽器メンバーとは別に、ダンスの友達も加わってやった。
『STAY AWAY』は、MVにダンスのパフォーマンスがある。これが、当時、コマーシャルなんかにも使われていた。たいへん目をひくものだった。購入したシングルCDが今でも手元にある。
メンバーが踊っているのだけれど、これはCGだそうだ。メンバーは実際には踊っていない。踊る案もあったが実現しなかったらしい。でもむしろこの「不自然さ」がかえって味になった。味というか、違和感が私の関心を惹いた。
ラルクといえばそういう、観るものの興味をひきつける、遊びがあって型破りな宣伝をたくさんしていた。大人になったいま、あらためてWikipediaを読みながら思い出した。自由な発想で、自分たちで決めて納得した発信をするというスタンスを、彼らのカッコ良さや魅力として私は感じていたのかもしれない。
『STAY AWAY』、それから映画『FINAL FANTASY』のテーマ曲『Spirit dreams inside』などを発表して以来、しばらく彼らのラルクとしての活動の発表は私に届かなくなった。私は高校生になった。私側の変化もあって、ラルク浸りだった私もいつのまにかどこかへ潜ってしまった。
サブスクの隆盛がめざましく、ラルクも大量の音源やらMVを解禁している様子。ここに来て出会い直しができたのもそのおかげだ。
『STAY AWAY』は疾走感ある爽快な曲だ。kenのへろへろ音程が揺れるギターソロが大好きだった。ストラトギターに装備された「アーム」を右手に握りながら(指にひっかけながら)演奏することでこの音の揺れが出せる。ベースのtetsuのブリブリに歪んだトーンとソロも好きだった。ボーカルがギターを持たないパターンの4ピースバンド特有といっていいかわからないが、各パートが良い意味で独り走りし、バンド内で誰が一番好き勝手やるか競っているみたいな活発な態度が好き。私の偏見だとJUDY AND MARYを思い出す。
yukihiroのスコンスコンと抜けたカラリとしたサウンドのドラミングも気持ちいい。作詞はhyde、作曲はtetsu。メンバーみんな曲を書くバンドだけど、tetsuの曲には中性的な色めきがある。透明感というかなんというか、美しさ・儚さというか。『Pieces』とかにもそれを思う。L’Arc〜en〜Cielの好きな曲、いっぱいある。
青沼詩郎
L’Arc〜en〜Ciel 公式サイトへのリンク