TVショーの架空バンドのはしり
君を愛することのマジカル、キスの甘さ、君の甘美さが夏の陽光のようにぼくにふりかかるよ……みたいな印象の歌詞で、SugarとHoneyのあまあまさわやかソング。“Sugar, Honey, Honey”が“Honey, Sugar, Sugar”にひっくりかえります。単純すぎるくらいイメージのブレが少ないモチーフを展開させる工夫が微笑ましい。
マリンバとエレピの低音域の組み合わせがまるで木管楽器がいるみたいに感じるサウンド面でのキャッチになっています。甘いマスクを想像させる声質のリードボーカルはロン・ダンテさんといい、後年バリー・マニロウ(『コパカバーナ』などの代表作あり)のプロデューサーになる人だそうです。そのロン・ダンテ(Ronnie Dante)さんのボーカルもまた本曲におけるサウンド面でのキャッチ力の必須要素でしょう。男声と女声がかけあう局面もあってシンプルな音楽性を謳歌する輪を感じます。
Ⅰ、Ⅳ、Ⅴのコードでほぼ弾けるところもみんなで演奏したくなる要素ですが、途中ブリッジのところで出てくるⅦ♭のアクセントが必要十分。ちょっとビートルズ感薫る気の利いたコードですね。
アーチーズは1967年にコミック本に初登場したというキャラが発祥になっているバーチャルバンドだそうです。いまでこそサムネイルやプロフィールがアニメの絵になっている覆面アーティストは数多ですが、そのパイオニアかもしれませんね。日本でも『アーチーでなくちゃ!』とのタイトルで『The Archie Show』が放送されていたそうです。バブルガムポップのジャンルの好例として彼らが語られることもあるという。
ソングライターとしてクレジットされている二人のうちのひとり、ジェフ・バリー(Jeff Barry)はロネッツの『Be My Baby』(ドン、ド・ドン、タン!のドラムイントロが世界中でどれほどオマージュされたか気が遠くなる規模の影響を与えた神曲だと私はあがめています)の作者です。
Sugar, Sugar The Archies 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Andy Kim、Jeff Barry。The Archiesのシングル、アルバム『Everything’s Archie』(1969)に収録。
The Archies Sugar, Sugar(アルバム『Everything’s Archie』収録)を聴く
まっすぐに8分音符の同音連打をならべるブリッジのところとか、ヴァースの最も印象的な主題のところも「シュガー」とか「ハニハニー」とかほぼひとことですし、これくらいシンプルならおれにもハモれるかもしれないと思わせるんですよ。16分音符で細かく音程もリズムも動く、シンガーソングライターによって書かれそのシンガーソングライター自身がパフォーマンスすることを想定して書かれた「オレの歌」みたいなものをハモる気にはなかなかなれません(私も歌を書くので自戒の意味でいっています)。
みんなでハモれる曲はシンプルすぎるくらいにシンプルでいいのです。もうかりんとうみたいなメロディでいいわけだ。まっすぐで棒状だという意味です。
左にドン、バシ、ドン、バシ……と単純なアクセントと安泰なサウンドのドラム、右にはベース。リズムの屋台骨を左右に開いた定位です。2・4でクラップが鳴っていて輪を感じます。
左のほうにはりつくようなエレピの低音がいると思うのですが、エンディングではその音色とそっくりな音がブーッと長い音符を減衰しない音色で描き込みます。アンプで増幅されキャビネットを通るエレピの低音が木管楽器そっくりなのかなと最初思いましたが、やっぱり低音に質量のある木管楽器が入っているのかどうかわかりません。
マリンバのコンコンとかろやかでやわらかでかわいい音色が楽曲のアクセントになっています。シュガ、とうたわれ、「ここ・ここん・こんこん……」とオブリが入る。気持ち良いです。
ボーカルが群像で、エアー感、前後感があって、大勢がそこにいる空気があります。エンディング付近になると音域があがって、ⅲがちょっとフラットしたみたいなブルーノートでぶっつけたスパイシーなフレーズがリフレインされ、かりんとうみたいな棒状な温度感を基調にやってきた本曲も後半が熱くなる設計だったのだとわかります(Pour a little sugar on it, honey……と歌詞がなっていくところです)。
架空のバンド名義なので、誰か特定のキャラだけが突出して覇権を握ることのないバランス感を覚えます。本曲のよしあしなところでしょう。架空のバンドと曲そのものへの尊重の態度です。
青沼詩郎
参考Wikipedia>Sugar, Sugar、Everything’s Archie (album)、The Archies
『Sugar, Sugar』を収録したThe Archiesのアルバム『Everything’s Archie』(1969)