作詞・作曲:Jimmie Dodd。The Merry Mouseketeers(メリー・マウスケティアーズ)のシングル(1955)。ABCのテレビ番組『Mickey Mouse Club』(1955-1960…1996?)オープニングテーマ。

マウスケティアーズのミッキーマウス・マーチを聴く

ディズニーアニメの映像をみているような気分になります。楽曲のリスニング体験が純粋に連れてくるというよりは、完全にそういうモノと結びついてしまう、イメージが私に植わったことによる色眼鏡かもしれませんが、あえてそれを否定しましょう。純粋に、実際にめまぐるしく楽曲のサウンドの中でキャスト(パート)が入れ替わり現れ、展開する音楽です。

ずぶとい低音楽器からフルート(ピッコロ?)まで。トライアングルがけたたましい目覚まし時計の様相。合わせシンバルのフォルテシモは目から星だか火花が出そうです。ミッキーマウスを追いかけるドラ猫のアタマの上に何かエグい質量のものが落下したシーンを想像させます。ホルンの3連符が見事。主題のモチーフが次々とパートをうつろいます。まったく同じ音形がコピペされるというよりは、それぞれのキャラクター(楽器)の持ち味を活かして伝言ゲームをしているみたいにモチーフがバリエーションしていく様相といいますか……伝言ゲームですと最後の人に伝わるころには原型をとどめない惨事も起こりうるのですが、そこは音楽の秩序が正気を保ち、エンディグではミッキー唱和万歳、イェー・ミッキー!と児童の声。みなが「ミッキー」を唱えればドナルド・ダックが「いや、おれだ!」といわんばかりに“Donald Duck”と張り合います。濁音だらけのドナルド・ダックが主たるモチーフor主題でしたら、この軽快なトリプレットの跳ねたグルーヴの行進曲が生まれるでしょうか。もっとドタバタしたような、格好のつききらない愛嬌の表出するコミカルな音楽になるのを想像します。「ミッキー(Mickey)」の固有名詞の語感が生む行進曲は世界の有名曲になりました。

御本家がどうのという次元を超越して広まっている楽曲だと思うのでマウスケティアーズの音源をヘッドホンやスピーカーで「聴く」意思をもって聴いたのは初めてでした。モノラルの狭いフレーミングの中を音がひしめき、合わせシンバルが目の前を破裂させるダイナミクスに富んだパワフルな音像です。

同音連打のボーカルメロディで音域も狭く、誰でも歌えます。シンプルで歌いやすいメロディに、タッカタッカと跳ねたグルーヴが生命を与えます。セカンダリードミナントや転回した低音を思わせるなめらかなカウンターラインが美しい。

図:『ミッキーマウス・マーチ』ボーカルメロディの採譜例。突飛なリズムはありませんが冗長せず、休符や音価の違いを活かした気の利いたメリハリ。音域は下はE♭から上はC。つまり長6度の声域があればほぼフルコーラスが歌えます。これなら老若男女がミッキーについて行けるわけです。

青沼詩郎

世界の民謡・童謡>ミッキーマウス・マーチ 歌詞の意味・和訳 アメリカのテレビ番組「ミッキーマウス・クラブ」テーマ曲 楽曲『ミッキーマウス・マーチ』の歌詞、その発表の初動と作詞作曲者のジミー・ドッドのキャリアについての要点を簡潔にまとめた記事。作曲者自身が番組の司会者でもあったとはマルチタレントぶりに驚きです。漣健児による日本語訳詞についても紹介した記事です。

参考Wikipedia>ミッキーマウス・マーチ

『Disney BEST 英語版』(2018)。『Mickey Mouse March』を収録。

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『ミッキーマウス・マーチ ギター弾き語りとハーモニカ』)