私には、素敵な映画を耳打ちしてくれる友人知人がいる。きのう教えてもらったのが『沈没家族』(2018)。
武蔵大学の学生だった監督・加納土の卒業制作で生まれた作品の劇場公開版。
いま、ポレポレ東中野で観られるそう(※執筆時:2020年10月)。2019年・今年(2020年)と上映を重ねて来た様子。映画の舞台も東中野なので「里帰り上映」と銘うたれていた。
シングルマザー(監督の母、加納穂子)がはじめた共同保育で育った、監督の加納土。その共同保育(と共同生活)の取り組みにつけられた名前が「沈没家族」。
成長した監督が、当時をともに過ごした人を追う。母、父をめぐる。取材する。そういう内容の映画だ。
映画は館でみるとして、主題歌が気になった。
MONO NO AWAREの『A・I・A・O・U』。
浮遊感。歌詞の乗せ方。リフレイン。ありふれた手触りの語彙を繰った、ただならぬフックのポップ感。
エレクトリック・ピアノの音、ドラムス。まろみのある音と空気感。ウワモノの合いの手。間奏に『おもいでのアルバム』(増子とし作詞・本多鉄麿作曲)のオマージュと思われるギターソロのメロディ。ボーカルメロディを楽器類がなぞるサウンドからは、私の偏見ではWeezerを思い出す。フジファブリックのようなサウンドのキャラクターも感じる。
実際、フジファブリックはボーカルギターの玉置周啓が愛聴してきた音楽のよう。メンバーは彼と加藤成順(ギター)、竹田綾子(ベース)、柳澤豊(ドラムス)の4人。
彼らのサード・アルバム『かけがえのないもの』を聴いてみたけれど、ことばの遊びや発想、着眼点、その発展のさせかた、まとめかた、それらと呼応した音楽、かつ、ポップの体を保ったバランス感覚が秀逸。
アルバム曲すべてに触れたいくらいだが、ここではふたつをピックアップ。
『かむかもしかもにどもかも!』
怒濤の早口言葉が衝撃。NHK・みんなのうたへの書き下ろし曲とのこと。
MONO NO AWAREのうわさはかつてから聞き及んでいた。何度かサブスクリプション音楽アプリで再生して、何曲か聴きもした。今あらためて彼らの音源をめぐってみて「あ、これは聴いたことがあったな」と思い出すものがある。そのときの私はさらっとスルーしてしまっていた。つくづく、そのときの自分に引っかかるものは移ろうことを思う。
『言葉がなかったら』
この曲好きだ。どこかで聴いたことのあるような曲調、サウンドを思う。
彼らは出会った音楽のいいところを取り入れて、「MONO NO AWARE」としてユニークに新しく、どこかなつかしい音楽を表現する。
こちらのインタビューにも彼らが通ってきた音楽のうち、実際にそのオリジナル楽曲に影響をもたらしたと思われるアーティストの曲がいくつも紹介されている。センスがお高い。玉置と加藤が八丈島出身というパーソナリティも面白いし、稀有だ。環境が人格に与える影響は大きい。
青沼詩郎
『沈没家族』主題歌『A・I・A・O・U』を収録したMONO NO AWAREのアルバム『かけがえのないもの』(2019)
『沈没家族』劇場版(2019)
『沈没家族――子育て、無限大。』(加納土、筑摩書房、2020年)