ゆらゆら帝国が好き。

私はゆらゆら帝国を高校生の頃に知って。ソングライティングセンスと3人編成バンドの演奏…その歌詞とロックサウンドに酔った。

バンドは2010年3月31日に解散してしまって、メンバーそれぞれの道を歩んでいることと思う。

中でもその後の坂本慎太郎の活動は私に届く。でも、それもごく大海の一滴だった。

昨日知ったのが、『あなたもロボットになれる feat. かもめ児童合唱団』。

歌詞がナンセンスで最高に好き。眉間にチップを埋め込むだけで私もロボットになれるなんて…

話を逸らすけれど、ナンセンスとは何かを私は長新太の絵本から学んだと思っている。『キャベツくんとブタヤマさん』(1990)は私のフェイバリット・えほんのひとつ。

こうした作品の世界をナンセンスと形容することを覚えた私は、坂本慎太郎の描く作品のそれもナンセンスだと考える。長新太と坂本慎太郎に共通点、関連を見出している。

話を戻す。『あなたもロボットになれる feat. かもめ児童合唱団』というクレジットが、すでに強烈なフックを私のこめかみにブチ込んでいる。

曲のタイトル:あなたもロボットになれる>私「えぇ?! なれんの?! ロボットに?! どゆこと? 絶対聴くでしょこれ」
feat. かもめ児童合唱団>私「えぇ?! あの刺激的なバンドサウンドのインパクトが強い【ゆら帝】やってた坂本慎太郎が児童合唱団とコラボ?! なにそれ、どんなご縁?! 聴くでしょ絶対、これ」

とまぁ、こんなインプレッションを得た。といいつつ、ゆらゆら帝国の『バンドをやってる友達』ではママギタァの朴訥した女性ボーカルを起用したり、ほか作品で子供の歌声をフィーチャーした曲もあったりで、ゆらゆら帝国、坂本慎太郎の歌のセンスは老若男女と親和する奥行きを持っていることを私は知っていた。だから、「かもめ児童合唱団」の字をみて、「やってくれた」(彼ならやりかねない)と思ったのもまた事実だった。これは、それまでの殻を脱ぎ捨てられていないという批判と誤解しないでほしい。最大級の賛辞である。あくまで、「すごいわかる」「見事にやってくれた」「こういうの欲しかった」と私が思ったまで。

坂本サウンドと複数の児童の調和と高みを味わったらやはり、作曲者・坂本本人の表現でそれが欲しくなる。それはちゃんとあった。嬉しい。(というかオリジナル)

美しいコーラスの芯あるトーンとともに坂本のボーカルで曲の表現を味わえる。女性か子供による合いの手コーラスも聴ける。

ミュートが気持ちよく聴いたポツポツと衝突するドラムスの音、バンジョーの音がリズム・アンド・ブルースとカントリー・ロックを融合させたよう。そこに坂本慎太郎の歌声の存在感。ナンセンスな歌詞が描くおかしな世界。SFチックで、おとぎの話。それでいて、現実を痛烈に風刺しているようでもある。こんなおかしな世界、ありえないのに「ある」と思えてしまう。そんな「if」を見てみたいとさえ私は思っている。

このおかしな世界、もしくは私の生きる現実を「笑い飛ばす」ことなく、感情を排しきって語っている曲だとも思う。

“決して痛くはないですよ” “不安や虚無から解放されるなら決して高くはないですよ”

あやしく諭す、なぞのハカセみたいだ。

“ロボットになろう” “ロボットになろうよ”

すでに「そちら側」に渡った、布教者のようでもある。

“不安や虚無から解放されるという” “危険のランプが点滅している”

諭すでもそそのかすでもない、俯瞰する第三者の視点もある。

(“”内は『あなたもロボットになれる』作詞・坂本慎太郎より引用)

様々な「ロボ」を紹介した直後に合いの手で「鳴りもの」が入っている。ウゴゴ、スライド・ホイッスル、ハンド・クラップ、ヤギの鳴き声をおもわせる何か、トレモロかワウかフェイザーのようなゲート系?エフェクト・ペダルかアームを使って揺らしたようなエレキ・ギター。音楽的な遊びが博識。私はうなる。南国を感じさせるスライド・ギターがこの曲の「おとぎ」「SF」「ここではないどこか」「トリップ」「異世界」感を高める。それでいて、私の現実と背中合わせ、表裏一体のものであることを示唆してもいる。ぞっとする感じもそこにはあって、でもそれは怖くはなくて、無情で純粋で快いものだと受け入れている。

青沼詩郎

坂本慎太郎オリジナル『あなたもロボットになれる』を収録したアルバム『ナマで踊ろう』(2014年5月28日発売)。
『あなたもロボットになれる feat. かもめ児童合唱団』を収録したかもめ児童合唱団のアルバム『インターネットブルース』(2016)。私に衝撃の雨霰をもたらした名曲・名演の玉手箱。
『あなたもロボットになれる feat. かもめ児童合唱団』は7インチ・レコード・シングルとして2014年11月7日発売。カップリングは野口五郎のカバーで『グッド・ラック』。