高校生のときに「ベストアルバム漁り」をよくやった。
町のTSUTAYAで知らない洋楽アーティストのベスト盤を目をつぶって適当に触ったやつをとってくるという戯れ。ベストアルバム以外でもなんでも。「目をつぶって」は嘘だけど、直感でひっつかんで数枚まとめてレジに持って行く。旧作5枚1000円1週間レンタルのサービスをよく利用した。
映画『Cocktail』(1988)の存在を知ったのは、テレビだったと思う。映画をちゃんと見た記憶がないから放送の予告か何かを見て知ったのじゃないかと思う。
音楽が私の耳を引いた。テレビの放送告知のバックで流れた音楽がよかった。記憶に残っていないだけで、映画をテレビ放送で観たかもしれない。部分的に観たのかもしれない。タイムマシンで過去に行けたら、この曲との出会いを探りたい(もっと他にあるか)。
とにかく音楽がいいのだ。サウンドトラックにThe Beach Boys『Kokomo』が入っている。
あと、このサントラをなんとしてでも引き寄せたいという強い動機を私に与えたのが『Hippy Hippy Shake』だった。押しの強いシャウトボーカルがノリの良いビートに乗ったロックンロール調。テレビから流れたそれを聴き、いいなこれ! と思ってサントラをレンタル屋に探しに行った。
そう、私は『Hippy Hippy Shake』をChan Romeroのオリジナル(1959)でもThe Beatlesのカバー(1963)でもなく、映画『Cocktail』のサントラ盤のThe Georgia Satellitesの演奏で認知したのだ。…それ以前にChan RomeroによるオリジナルやThe Beatlesほかカバーによる音源をどこかで耳にしていた可能性もなくはないが、おそらく認知未満だった。記憶を混同させたりあいまいにするのは、ロックンロール・ビートに似た曲が多いからかもしれない。というか、この典型を用いれば似た曲になるのだ。
『Cocktail』サントラで特筆したいのがBobby McFerrin『Don’t Worry, Be Happy』。楽器を一切使っていない。声を含め、肉体による演奏のみのひとり多重録音だ。
新型ウィルスの流行と巣ごもり活動の隆盛で多重録音する人、その発表や発信が一時急増した印象があった2020年の春〜ゴールデンウィーク頃だったけれど、そんなのよりもずっとずっと前にBobby McFerrinはこんな芸当をやっていた。アメリカのヒットチャートで楽器を一切使わない曲が1位になったのは初めてのことだったそうだ。また、ジャズ・ミュージシャンとしてはLouis Armstrong以来とのこと。1988年グラミー賞の「Song of the year」「Best Pop Vocal Performance, male」「Record of the year」 を『Don’t Worry, Be Happy』で受賞(Wikipedia)。
音楽面でのハイライトが潤沢な、夏に観たい娯楽映画『Cocktail』はトム・クルーズ主演、言わずもがな。あえて寒い時期に観るのもいいかもしれない。きっと幸せになれる。
青沼詩郎
映画『カクテル』(1988)。
Bobby McFerrin『Don’t Worry, Be Happy』を収録したサウンドトラック。