人型のなにかが空を飛んでいる…顔がアンパンじゃないか! というのはなかなか現実離れしている

兵庫県龍野市が、毎年童謡のための詩を募集している。三木露風賞という。

今日7月1日はその締め切り日なのだ。

私は、昨年はじめてこれに応募してみた。落選したけど、10月くらいになって、入賞者の作品が載ったA4紙を主催が送ってくれて、読んでみるとたいへんためになったし面白かった。こういうものが選ばれるのかという傾向を見出す、なんておおげさなことはないけれど、他人の発想を知るのがおもしろい。ああ、そのアイディア俺も考えたわ。あるある、やっぱりね、みたいなこともあった。昨年の入賞者のことでいえば、たしかAI(人工知能)のことを表現した入賞者がいた。私もAIをテーマにするアイディアは持っていたから、うん、あるよねと思った。そのとき私が応募した作品のタイトルは『マンホールかぞえうた』だ。AIの作品は送らなかった。というか、AIの作品には自分で曲をつけてしまった。というか、曲と詩を同時につくったので「つけた」という感じでもなかった。

昨年の応募のときも、「あ、やべ。今日締め切り日じゃん」と思い出して昼休みに30分で書いて郵便局に突っ込んだ。今年もやっぱり「あ、やべ、今日までじゃん」と思って、朝、キッチンで30分で1篇書いた。今年は音階をテーマにした『かいだんのうた』というのをつくった。2年連続で「〜うた」とおしりにつく詩を書いてしまったところに、自分の悪癖を思う。

童謡に対しての私なりの愛やら思い入れがある。

ときに私は、地域の人たちがあつまる市民のおまつりで歌ったり演奏することがあった。今はコロナでそうした機会は全部なくなったけど、老若男女あらゆる人が往来する。そういう機会に演奏する私のお気に入りのひとつがたとえば財津和夫の『切手のないおくりもの』(先日このブログで取り上げた)だし、もうひとつ今日紹介したいのが『アンパンマンのマーチ』である。

作詞者はやなせたかし。アンパンマンの原作者。作曲者は三木たかし。おふたりとも亡くなっている。歌の名義は、ドリーミング。寺田 千代、寺田 嘉代の双子姉妹歌手だそうだ。

原作者が作詞を担当すると、二次創作物としてのアニメほか動画作品のほうと統一感が出る。それはただの「感」じゃなくて、2次の創作物を含めて作品を「地続き」にする制作の手法。原作者にはそれだけ仕事の負担がかかるけれど、これは理想的なやり方だと思う。(ただこじつけただけのタイアップなんて…やめておこう)

抽象的で、なんにでも響くことば選びは諸刃の剣である。でも、この『アンパンマンのマーチ』は最高純度の普遍性に高められた強さがある。

歌詞
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大人になってからこの詞を読んで感じるのは、純度ゆえのあやうさである。うわ、そこまで言えるのってすごいな、今の私なら、誤解を招くことをおそれて尻込みしてしまう! と思うようなことばが並ぶ。

この歌をぼやけさせない単語は固有名詞の「アンパンマン」によるところが大きい。もはや、この歌やアニメのアンパンマンを「まったく未知の新作」ととらえる人はほぼいないであろう。すでに理解の礎が築かれている。言い過ぎかもしれないが。

それでも、この歌、このアニメに初めてふれる新しい世代は日々生まれている。彼らが物心ついて、はじめてこの歌やアニメに触れたときどう思うのだろう。

私は自分のことにしてまったく覚えていないのだけれど、母親から聞くに、幼い私は仮面ライダーとか戦隊ものよりも断然『それいけ! アンパンマン』が好きだったそうだ。覚えていないし、理屈もなにもない。やはり幼い人にも、感性や選ぶ能力は備わっている。それは間違いないと思っている。

この曲を、大人になった私は近年、アコースティックギターと、ハーモニカホルダーに取り付けたハーモニカを携えて、ジャカジャカと6つの弦をかき鳴らしてフォークでパンクなニュアンスで弾き語っていた。この曲は、そうした「たぎる心」を余すことなく乗せてくれる。

コード進行マニアを自認する私としてはBパートの頭の和音が副次調のドミナントから始まるところが何よりもツボ。そしてベースラインが、副次調の異質な響きの旅をなめらかに順次進行でつないでいるところなんか、もう職人の魂を感じる私のアンテナのレベルメーター針が振り切ってピーーーーである(興奮した、失礼)。

あと、間奏のフルートやホーン系のオブリガードがいい。4度や5度で飛び跳ねる金管。エンディングでは音割りが細かくなって派手になる。

アニメをみるたびに、繰り返し聴く。それで好きになるのもあるのかもしれないけれど、ことばの力、作曲やアレンジメントの技術に裏打ちされている。「地域のおまつり」でこれをやると、ウケがいい。

青沼詩郎

歌ってみた