映像

フランク・シナトラ ライブ ニューヨーク 1974

観客に囲まれたフランク・シナトラ。ピアノのさりげないイントロから……私の記憶の引き出しにある音楽がさらりとはじまります。

蝶ネクタイに黒スーツ(タキシード?)のいでたち。熱心に聴き入る観客の表情を大写しに抜くカメラ。ぐるりと観客にかこまれたステージに歌手ひとり。右手でマイクを持ち、左手は態度、表現を担います。

ところどころ、歌のリズムにタメを与えます。途中でマイクを左手に持ち替えました。フェイクっぽい、崩した(このときだけの?)ふしまわしも見せます。最後の歌詞「My Way」の歪みかかった迫力。歓喜の聴衆です。エンディングの編曲がコンパクト。ライブのための特別な編曲でしょうか。

エルヴィス・プレスリーのカバー ライブ ホノルル 1973

エルヴィス・プレスリーのマイ・ウェイです。歌い出しから、彼の持ち歌(オリジナル)のような親和感。ソロバイオリンがふんだんに絡んでくる編曲です。

マイクを持つ手指のごてごてした指輪が目立っています。白い衣装と派手な装飾が照明を反射し、きらめきます。前後にずらして開いた2本の足で舞台にカッチリ食い込むような立ち姿が決まっています。バックバンドのメンバーも白の衣装で統一。

途中で曲調がトリプレットに。まさかの展開です。金管楽器が雄々しく鼓舞(管舞?)します。最後の最後の歌詞「my way」の“way”は大胆に主音の5度上へ。カバーもレジェンドな氏。

曲について

フランク・シナトラ(Frank Sinatra)のシングル、同名のアルバム(1969)に収録。作詞:ポール・アンカ(Paul Anka)、作曲:クロード・フランソワ(Claude François)、ジャック・ルヴォー(Jacques Revaux)。

Comme d’habitude(コム・ダビチュード)』が原曲で、フランス語の原詞はクロード・フランソワ(Claude François)、ジル・ティボー(Gilles Thibaut)によります。

Frank Sinatra『My Way』を聴く

チャリンチャリンとしたトーン、8分音符のリズムで和音をストローク。鍵盤楽器でしょうか。メロウなエレキギターのアルペジオが寄り添います。1・3拍目に比重のあるベース、キック。2・4拍目にリムショットのドラムス。折り返しからストリングスがウワァーっと顕現。目線の下のほうから込み上げるような管楽器も。ホルンのトーンに胸が熱くなります。コーラス部分からさらに管楽器の定位とダイナミクスがワイドに感じます。ボーカルもウワァーッとダイナミクスが出てきます。

2コーラス目からはグロッケンがチロチロと花を散らしたように。左に複数のフルートも入って哀愁漂います。

右側の金管楽器の重奏のリズム刻みも目立ってきます。エンディングはボーカルダイナミクス、音域の高み。感情が込み上げます。涙が出てくる。

最後はやさしく言い添えるように主題のフレーズを置きます。そう、私の道はこうだったんだよ、こうやって……こうして生きてきた……といった具合に、自分に言い聞かせるみたいな響きに私はじんと来ます。聴き手の心が主人公の心理に重なります。自分に言い聞かせ、ねぎらうように、肯定するようにやさしく、誇り高くうなずきかけます。

さて、道の途中だから、行かなくちゃ。

私に、今日もまた小さな部屋から出発する志しを与えてくれる歌です。

青沼詩郎

フランク・シナトラ 公式サイトへのリンク

世界の民謡・童謡>マイウェイ My way 歌詞の意味・和訳

曲の概要と歌詞の和訳が参考になります。

『My Way』を収録したFrank Sinatraの『Nothing But The Best』

Frank Sinatraの『My Way (50th Anniversary Edition)』

ご笑覧ください 拙演