安西マリア

ババーーー♪ ブラスの勇ましいイントロ。“ギラギラ太陽が”という一句でもう「勝ったな」と思えます。

エミー・ジャクソン

https://youtu.be/luJR213X2oU

エミー・ジャクソンが英語で歌っています。これが最初。彼女は日本の育ちで深津エミという日本名を持ち、湯川れい子がDJをつとめていたラジオ番組のアシスタントだったそう。洋楽として売り出されたのにはいろんな事情や企図があった様子。興味深い記事をリンクしておきます。

TAP the POP > GSブームに先鞭をつける和製ポップス第1号、「涙の太陽」は洋楽評論家だった湯川れい子の作詞家デビュー作

WHAT’s IN? tokyo > ニッポンの洋楽の立役者たち 音楽評論家・湯川れい子インタビュー①

まるでベンチャーズそのもののようなサウンドです。ベンチャーズの初来日は1962年、日本で人気が出たのが2回目の来日の1965年とのことで、エミーや青山のシングル『涙の太陽』が出る数ヶ月前の出来事です。まさに【「時の人」の音】だったのでしょうね。

青山ミチ

エミー・ジャクソンと同1965年、約1か月違いで発売したシングルで日本語で歌ったのが青山ミチでした(先日このブログで取り上げた『亜麻色の髪の乙女』を最初(1966年)に歌った人で、原題は『風吹く丘で』でしたが事情があって発売できなくなり、ヴィレッジ・シンガーズのシングル曲(1968年)となりました)。

曲について

作詞:湯川れい子、作曲:中島安敏

エミー、青山がGマイナー調で歌っています。ソから上のシ♭(1オクターブ+短3度)の声域が出せれば歌えます。安西は半音上のA♭マイナー調で歌っています。

Aメロから曲中の最高音程。“ギラギラ太陽が”の「た」のところですね。冒頭でもいいましたが、歌い出しの“ギラギラ太陽”という一句が必殺です。これでもはや「勝ち」で「価値」であり、「買った買った!」って感じですね…取り乱しました。このイメージを利用して、日焼け防止効果のある化粧品のCMに使われていたのを耳にした覚えがあります。

“ギーーーラ ギーーーラ”、それから“もえるーーーー ようにーーーー”といった具合に、長い音符をバンバンつかっています。歌い手の声の伸びを必殺のコピーとともに聴かせるメロディ。歌唱力+声質の魅力+金言級コピー(歌詞)+これらが活きるメロディ=最強です。

青山ミチは移勢させることなく歌っていますが、安西やエミーは“太陽が”の単語に移る瞬間に半拍食っています。推進力が出ますね。安西に至っては、「太陽が」の「う」と「が」でも食っています。この勢いの良さが再ヒットを手伝ったかもしれません。

長い音符を含ませて聴かせたAメロに対して、Bメロは歌の熱量は控えめです。歌のおいしさの比重の采配でいえば、この曲はAメロに重心があり、Bメロの前半はやや脱力するところになっています。Aで平静な導入、Bで盛り上げるといった構成とは反対のつくりかもしれません。

歌のおいしさの比重は圧倒的Aメロですが、リズムの込み入り具合はむしろBが急いています。8分音符を連打しながら順次〜軽微な跳躍で音程を上下行。丘陵地帯の山谷を登り降りするような、ラフティングで激しい流れをすいすいとさばいているような(わかりにくい?)。

と、Bメロを力の抜きどころみたいに言いましたがBメロ後半に展開があります。“なぜ なぜなの”の部分です。「なー   ぜー   」と、歌メロの発声の密度を曲中で最も下げています。からの、「なぜーなのー」でやや密度を回復します。景色が刻々と変わるようです。そして、先刻のAメロ形に戻るのです。

ポップの鋭さ

歌詞の内容からはシンプルに恋のしびれ、激情を感じます。主人公が翻弄されている様子も? Bメロでやきもきしたエネルギーを蓄積して、Aメロの再来で発散させる痛快さがあります。

意味や比喩が込み入った詩の良さ、あるいは意味や比喩を超越した深い詩の良さももちろんありますが、歌詞においては、題材をありのままに提示する(もちろん独自の視点は必要)ことでヒットがつくれることもあるようです。

『涙の太陽』はその点で鋭く、スピード感があります。言葉や音、歌い手のパーソナリティが一体となってガンっとリスナーにぶつかってきます。何より、焼き付けるような太陽とその温度を想像させる“ギラギラ太陽が”という黄金の一句が雄弁です。このワンフレーズでほんの5秒くらいなのに、心を掴んでしまうのです。

青沼詩郎

エミー・ジャクソンの『涙の太陽』収録盤。

青山ミチの『涙の太陽』収録盤。『亜麻色の髪の乙女』としても広く知られる『風吹く丘で』(改題前の曲名)も収録しています。大舞台の端っこまで届きそうな圧巻の歌唱。

安西マリアの『涙の太陽』収録盤。アレンジメントや音作りのかっこ良さ、光ってます。編曲は川口真このブログで取り上げたことのある、『ドリフのピンポンパン』の編曲者でもあります。あちらはにぎやかでコミカルな編曲でした。

ご笑覧ください 拙演