Otokotachi no Melody(1979)を聴く

作詞:喜多條忠、作曲:ケーシー・ランキン(Casey Rankin)。SHŌGUNのシングル、アルバム『SHŌGUN』(1979)に収録。

演奏が巧い。スタジオミュージシャンとして活躍するメンバーの集まりだといいますからさすがです。上まで清涼に抜けていくボーカルリストの歌唱が爽やかです。フェイクにメロメロになります。演奏もウマウマでキマっているのだけど、曲、あるいは主人公のアティテュードがちょっと投げやりというかぶっきらぼうというか、諦観や悟りも持っていて、不器用な感じもしてそこがいい。通常(というのもおかしいですが)、イモっぽい・イナたいと失敗したヘタウマみたくなってダサくなってしまう危険もあります。Shogunにその心配は無用。むしろ演奏が盤石でこそ、ちょっとありふれたオトコゴコロみたいなやさぐれ感に衣を着せずに出すことで一般の鑑賞者に身近に感じさせてくれつつ夢を見させてくれるのではないでしょうか。

バンジョーが左右にダブってあるのか、ワイドに音をひろげます。アコギやリズムのエレキギターを左右にダブるのは常套ですがバンジョーをダブってもいいのですね(私の聴き違いでなければ)。バンジョーは鼻がつまったみたいな独特のツッパリ感とキレの短さが魅力的です。バンドを邪魔しないといいますか。伸びる伸びるエレキギターや歌唱と、この詰まった感じのバンジョーのサウンドが好相性を発揮しています。バンジョーとピアノのコードストロークも相性が良くリズムと響きを担う肝です。

ドラムスとベースがドツッ、ボツッとタイトな音像です。1970年代末らしい音といえばそうかもしれません。私にもっと知見があればもっと豊な形容で評してあげられるであろうに。バンジョーもそうですが、これらベースやドラムスがタイトで緻密にハマっているのでボーカルやエレキギターの伸びがより抜群に映えます。BGVが厚く、どの声もキレッキレなのが凄い。全員ソロで歌える人なのではと思わせます。

男達のメロディー(2014)を聴く

私は最初こちらの音源でこの曲に出会ったので、これをオリジナル音源だと思い込んでいました。原曲はCキー、こちらはB♭キーで演奏しており、柔和・温和で包容力と器の広さが出た印象です。2014年のアルバムでリメイクされたのですね。

バンジョーでなくアコギがジャカジャカシャカシャカと華やかで左右に音の響きを広げます。オルガンが歌い、左にも気味よいエレキギターのカッティング。リードするエレキギターのザクザクとマイルドに深く歪んだアタックと伸びが極上です。

1979バージョンと共通ですが、コーラスの間(インタールード)でⅢ♭/ⅳ→Ⅳ/ⅴ的なふわっとした和音を反復する響きが気持ちいい。エンディングではこのパターンがⅣ/ⅴ→Ⅲ♭/ⅳと、順番が入れ替わってフェイドアウトする工夫が巧い。コードの書き方がヘンかもしれません、根音から7.9.11の音が加わってテンション感を出す響きです。私も好んでよくつかいます。5弦を低音位にして人差し指1本でベタっと同じフレットをまとめて高いほうの弦までセーハ押さえて鳴らしてしまうのです。

男達のメロディーの話に戻ってひとこと付すと、年季、シワや年輪が入って味わいに深みが出たよう。個人のあゆみのそばに長く歌える歌がある僥倖を思います。

青沼詩郎

参考リンク MANTAN WEB>SHOGUN:「男達のメロディー」は大嫌いだった… ふてくされて歌った結果大ヒット メンバーの出入りがあるバンド、Shogun。すべての時期に在籍しているオリジナルメンバー・ギターボーカルの芳野藤丸さんへのインタビュー記事。

参考Wikipedia>男達のメロディー

参考Wikipedia>SHŌGUN

参考歌詞サイト 歌ネット>男達のメロディー

『Otokotachi no Melody』を収録した『Shogun』(1979)

『男達のメロディー』を収録したShogunの『THE ROAD OF LIFE』(2014)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『男達のメロディー(SHOGUNの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)