ずっと散歩中

初めて買ったアルバムがJUDY AND MARYの『POP LIFE』(1998年、Epic Records)だった。

住んでいた街の、今はなくなってしまったCD屋で買った。私は当時小学生だった。確か、衝動的に買ったのでなくて、予約とかして計画的に買ったんだった気がする。小学生だったし。

JUDY AND MARYを最初に見知った衝撃とかが、私の記憶にはない。好きになったきっかけの、その瞬間を覚えていないのだ。気付いたら、もう好きだった。

私が『POP LIFE』に触れるよりも前に、テレビアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』が放送されていた。私はそれを5歳上の兄と居間でゴロゴロしながら毎週観ていて、その主題歌がJUDY AND MARY『そばかす』だった。刷り込まれるように好きになっていったんだと思う。狂ったようなギターのイントロ、YUKIの声、歌メロが良かった。

『散歩道』は成長して大人になった私の中にもずっといる。近年、私がある筋でローカルラジオに出演する機会があったときにも『POP LIFE』のCDを持ち込んで、かけてもらった。ただ好きで、ずっと心に持ち続けていた曲で、あえて分析的に聴き返すこともなかった。

ここ17年間くらいの私は、アコースティック&エレクトリックギター、ベース、ドラムス、歌といった楽器を多重録音して曲を作っている。さらに近年は、鍵盤ハーモニカやテンホールズ・ハーモニカを頻繁に使うようにもなった。『散歩道』のサウンドは、私の原点なのかもしれない。今朝になって、そう気付いた。イントロや間奏に入るピアニカ(ヤマハの登録商標。鍵盤ハーモニカ)が、気ままでハッピーな雰囲気。でも、歌詞にはキュンとなる素敵な言葉が並んで、ほろりとくる。

作曲者は、ドラムスの五十嵐公太。作詞者はYUKI。YUKIとTAKUYAによる詞と曲が多いJUDY AND MARYのレパートリーの中では稀だ。ちなみに、私が高校生の頃から幾度も出演した吉祥寺のライブハウス・シルバーエレファントはポップやロックのイベントと同じくらいプログレ(プログレもロックだけど)のイベントを開催しているハコでもあるのだけれど、五十嵐公太はこのプログレのイベントに幾度も出演している。私の一番昔からの大好きな一曲『散歩道』を作った人物が、私にとって一番馴染みのライブハウスと縁があるという事実に、しみじみとせずにいられない。

曲はDメージャー。牧歌的な明るさがある。半音下からずり上げるギターのコードストローク。左にエレキで、右にアコギが遊ぶ。シックスの音を含めたサビのベースフレーズ。サスティンで支えるオルガントーンは、かの名プロデューサー・佐久間正英。(ああ、さらにしみじみ。)

ⅣマイナーやⅥ♭を絡めたコード進行と歌メロ。ギターソロの終わりにのみⅤ→Ⅳのコード進行が使われているのが私のツボ。この進行は、古典を基にした音楽理論にはない語彙で、近代のブルースやロックには定番中の定番中の定番進行。さわやかでキャッチーなポップソング、そのギターソロの「お仕舞(お終い)」である「ここぞ」の部分に、さらっと一度だけ使ってみせているところがいい。

ちなみに、奥田民生によるカヴァーが存在するのも今朝知った。Sonyつながりか。

青沼詩郎

JUDY AND MARYデビュー15周年記念トリビュート・アルバム