作詞:林春生、作曲・編曲:筒美京平。宇野ゆう子のシングル『サザエさん/サザエさん一家』(1969)に収録。テレビアニメ『サザエさん』エンディングテーマ。

リスニング・メモ

『サザエさん一家』をモニタリング・ヘッドホンやスピーカーで集中して聴く日が来るとは思いませんでした。そして素晴らしい編曲と演奏。さすが筒美京平さんです。

左で強拍を強調するギター。16分割のグルーヴを出しながら拍のオモテを軽快にポイントしていきます。右のギターが対になっており裏拍をスチャラカ……と刻んでいきます。やはり軽妙。

ちょっと右が重めに感じます。ピック・ベースのペキっとしたアタックが真ん中らへんにチラチラしつつ、重い余韻が右側に広がるような印象です。有名なイントロをギターやマリンバと一緒にユニゾンするところなどはギターとのコンビネーションのせいなのか、より右に重心を感じるところです。

この有名なイントロ。音楽好きの間では有名な話かもしれませんが1910 フルーツガム・カンパニーの『バブル・ガム・ワールド』とよく似ています。

海外由来のものの良いところを忠実に映しとって自作に活かす筒美京平さんのまなざしの機敏さと解像度、その確かさを思います。ギターのベーシックリズムの刻み方などもとても忠実であるのがわかります。ここまで私は言ってしまっていますが、一応ご本人が「映しとった」つもりでいるかどうかは別の話であるとフォローを置いておきましょう。

フルーツガム・カンパニーがイントロでスタッとスネアのストロークを置いているところに、『サザエさん一家』ではティンバレスっぽい抜けの強いインパクト。このハマりの良さと来たら本家(仮)(バブル・ガム・ワールドのこと)を超えているのではと思うくらいです。

右側のフルートのオブリガードと、左側のヴァイオリン族が対の構造。サビの第5音がシャープしてシックスにのぼっていく和声の動きは真ん中あたりに感じます。マリンバのトレモロは風の如し、イントロフレーズのユニゾンも大吉の効果。

ドラムスの存在感はほとんどハイハットです。イントロのすきまに「ドンドンドン」と大太鼓のトーンを感じます。キックじゃなくて大太鼓(グラン・カッサ)かなと思います。ドラムキットというよりは、ほとんどハイハットだけを使っている感じかもしれません。

『サザエさん一家』の名の表すように、コーラス間で声優さんたちが無防備な日常の声を演じます。定位が振ってあって、右から左から一家の声が上がる仕掛けです。サザエさんの声だけは中央に定位しているのがポイントですね。

案外長いサイズ感かもしれませんが、主題の通りの多様な一家の声優さんの演技の登場、そして底抜けに優れたメロディや和声、リズム、編曲や演奏の精緻のおかげで大円満の聴き応えがあります。シメはあのティンバレスです。カン! サザエさん一家、フォーエバー。

後記

アニメ『サザエさん』のオープニングは主人公かつ作品名を冠する『サザエさん』のコミカルな様子が描かれる主題歌。

前にグングン行くダウンビートが通りを行ったり家でもぱたぱたと動くサザエさんのイメージを映します。ビブラフォンの漂う響きが心地よい。ドラムスが絢爛。キレのよいミャンミャンというギターはエンディングにも通じます。ブラスも元気感。

エンディングはアニメを豊かに動かす登場人物ら:『サザエさん一家』が主題で結びがばっちり。家に行列した一家のシルエットがおさまって躍動する映像が脳内再生されます。

図:『サザエさん一家』イントロモチーフの採譜例。移勢でつながった2拍のまとまりのモチーフをリフレインします。図中4小節目は短2度の刺繍音がアクセント。しつこいくらいに反復して、期待通りに4拍目のアクセントの補完がなされる気持ちよさ。これが国民と50余年(2023年時点)寄り添い続けたテーマンソングの顔たるわかりやすさ、といったところでしょうか。

青沼詩郎

参考Wikipedia>サザエさん(テレビアニメ)>音楽

テレビアニメ サザエさん 公式サイトへのリンク アニメのあゆみを時事を参照しつつ振り返る『サザエさん 50年の歴史』が圧巻。

宇野ゆう子のシングル『サザエさん/サザエさん一家』(オリジナル発売年:1969)

『サザエさん一家』『サザエさん』を収録した『サザエさん音楽大全』(2013)。恥ずかしながら「こんなウタモノもあったのか」から「タマの鳴き声」まで収録。サントラであり、「大全」の名の通り。