倫理を問う輪

のんきなCメージャーの響きのコーラスにAmのおどろおどろしいヴァースがコントラストを与えます。くだんのコーラスはCメージャーにFmのコードなどまざりますし2/4の中途半端な小節が入りAメージャーに移ってコーラスを反復します。4小節+4小節のコーラス。

マンドリンのトレモロやメロトロンの音があやしいエスニック?大陸風。エセ風。バッタモン臭がして絶妙。

オノ・ヨーコさんのリードボーカルが一瞬入ります。歌詞の内容としても女性の登場人物の発言を担う部分のようです。というのも……

インドへ瞑想旅行・滞在しに行っていたときのビートルズの面々、その瞑想修行の滞在者のなかに母と息子のつれあいがいたそうで、その母子がある日、出かけて虎(tiger)を殺して(狩って)帰って来たことがあったといいます。その残虐行為への疑義・抗議・反感が本曲の発想元になってるようなのです。本曲のサビ(コーラス)は「ヘイ、何を殺してきたんだ?バンガロービルよ……」とのラインを反復するもの。なんだか賑やかに童謡や民謡をみんなで歌ったようなガヤ感があるのであまり残忍な行為への問いかけ、という真摯なテーマをまじめくさって表現したふうにも感じられないのがなんともジョン・レノンらしい捻くれた、あるいはすかした、ポーカー・フェイスな、婉曲な知性・感性だなと思います。

話を戻すと、虎を殺しちゃって罪だよ!というのに対し「凶暴そうだったから(仕方なし)」との虎を殺した息子の擁護のような風向きの発言をするのがくだんのオノ・ヨーコさんの歌唱部分のせりふなのだと思います。そして見た目が凶暴そうなら殺されても仕方ないのですか。だったらば……と続く歌詞。

楽しい調和した団円の雰囲気もあるのに、混沌とした暗雲たちこめるような両極端な性格も兼ね備え、そして反復されるコーラスが「歌」としての強度も入念に保証します。サウンド(録音作品としての)面、ソングライティング面でも極めて独創性が高いうえ、道徳や倫理の問いすらしれっと覗かせる一級の芸術です。

The Continuing Story of Bungalow Bill The Beatles 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Beatlesのアルバム『The Beatles』(1968)に収録。

The Beatles The Continuing Story of Bungalow Bill(2009 Remaster)を聴く

これ、アルバムの曲順で聴くと前曲が『ワイルド・ハニー・パイ』なんです。ビートルズの全録音作品のなかでも最もひどい(ほめてる・かつけなしてもいるw)曲からほとんどひとつづきにつながって、なんだか急にスパニッシュ・ギターみたいなパッションと哀愁にみちた超絶技巧フィンガリングみたいなガットギターの響きがはじまる。かとおもったら急に「へ〜いバンガロービル♪」の童謡みたいなサビがはじまります。テレビのチャンネルをガチャガチャ(はもう言いませんね)変えたみたいに複数の思念がコラージュされたような導入です。置いてけぼりくってキョトン顔になるリスナーは私だけですか?

ブーンとベースのうなる質量感が大きすぎる。手持ちの解像度のよいヘッドホンで聴くと低音で耳が圧迫死するかと思うくらい出ています。右定位にパカンとかわいたドラム。スネアをタッタカタッタカ……と疾走する動物の足取りのようにコントロールします。『ゲット・バック』のリズムパターンみたいですね。ニュアンスがあって優れたドラミングです。左にドラムスとリズムのきらめきの双璧になるタンバリン。こちらもリズムのメリハリのすぐれた演奏です。左に寄りにはゴシャ〜ンとアコギの響き、コード感の重心を担います。

右にコロコロとマンドリンのトレモロ。コーラスが明けるとこいつの醸す神妙なコンチネンタル臭とともに重苦しいヴァース。繰り返しやってくるたびにお前はなんなんだとツッコミたくなる。オルガンがピーと重なってうさんくささを助長します。コーラスに入るときに一瞬のスキをついていちいち“All the children sing”とアオリが入る。猫の手を借りるようなノリで子(children)を借りたてます。

エンディング付近には口笛なんかも重なってきます。ベーシックリズムが抜けてメロトロンのトロンボーンが残る。いつのまにかハネたリズムで演奏している? 音が鳴り止む最終部付近はちょっと鍵盤(メロトロン)弾き損ねてませんか? 細かいところが「なんなんだ」「どういうつもりなんだ」とツッコミを誘います。でも神妙。バカにできない生真面目で神経質な人格が本曲に潜んでいるからです。そこが嫌味じゃなくて良い。嫌味かもしれないけれど本気だから嫌味じゃない。ジョン・レノンの人格の表裏一体の魅力が滲み出た楽曲ではないでしょうか。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ザ・コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロー・ビル

参考歌詞サイト Genius>The Continuing Story of Bungalow Bill

ザ・ビートルズ | The Beatles ユニバーサルミュージックサイトへのリンク

『The Continuing Story of Bungalow Bill』を収録したThe Beatlesのアルバム『The Beatles』(1968)