かもめ児童合唱団が紹介してくれる音楽の世界にハマっている。

坂本慎太郎を検索していて『あなたもロボットになれる feat. かもめ児童合唱団』が出てきて知ったかもめ児童合唱団。なんだこの子らは?! その正体は神奈川県三浦、三崎のあたりの4〜13歳の少年少女約30人で、音楽プロデューサーの藤沢宏光と出会って2008年頃から音源の制作とリリースをするようになった合唱団である…といったことを先日のこのブログの記事に書いた。

で、彼らが2019年3月13日に発売したアルバム『ワンダフル・ミュージック!』の曲目を私は眺めていた。

曲名を眺めるだけでも楽しい。コピーライターもうなるような、ひきつけるタイトルの文字列。それに豪華な原作ミュージシャンたちの名前がズラリとならぶ。合唱団オリジナル曲も。

気になったもののひとつに、『すばらしいさよなら』があった。作詞:友部正人、作曲:宮沢和史

友部正人に関して、キャリアあるフォークのベテランという程度のへぼい知識しか私にはなかった。

でも先日、特別番組としてテレビ放送されTverなどのインターネットサービスにも乗っかった『磔磔というライブハウスの話』に友部正人が出ていた、とすかさず思い出した。京都のライブハウス・磔磔のオーナーや店のヒストリーを中心に、磔磔に縁のあるたくさんのミュージシャンたちが出てきて語る内容だった。友部正人のシーンはそのなかのごく一部だった。

作曲者の宮沢和史THE BOOMのボーカリストだった人。私も好きな歌『島唄』『風になりたい』などを作った人だ。

その人と友部正人の共作。気になって私はすぐオリジナルをたどった。

『すばらしいさよなら』友部正人のアルバム『遠い国の日時計』(1992)に収録されている。こちらの記事が参考になった。

12弦ギター、ハーモニカ、バッキング・ボーカルを担当しているのは作曲者の宮沢和史。音を聴いて、バッキング・ボーカルに彼がいるかなと抱いた私の気付きは当たった。

ハーモニカがボーカルと重なる瞬間があるけど、友部正人による多重録音の可能性を考えた。けどハーモニカも宮沢和史だったとは。透き通って芯のあるすばらしい音色が、上へ下へ舞う。

すこし右奥に定位(ステレオにおける、音源を感じさせる位置)していて広がりと厚みをもたらしているのが彼の12弦ギターだろう。

作詞について。

サビ、曲のタイトルにもある “すばらしいさよならを見つけてあげたい”(『すばらしいさよなら』より、作詞:友部正人)。

「さよなら」はするもの。「さよなら」は言うもの、告げるもの。そんなつかいかたを私は持っている。

でも、“見つけてあげたい” なのだ。

う〜ん、なんて想像させる歌詞なんだろう。

見つけてあげたい、と告げる主体と、その言葉を投げられる “あなた”。ふたりの関係はどんなものなのだろう。

もちろん、それは現実の友部正人to私でもある。そうやってとらえてかまわない。

でも、そうでなくてもいい。

これまでの友部正人の実体験において出会った誰かへの、彼のメッセージでもいい。

歌は架空のものでもある。

だから、この歌の主体は誰でもないし、登場する “あなた”、聴き手でさえ誰でもないのかもしれない。それを第三者として、フカンして観察しているのが私だ、ということでもいい。

もういちど記す。

“すばらしいさよならを見つけてあげたい”(『すばらしいさよなら』より、作詞:友部正人)。

ウンチクをゴネたけれど、このまっすぐでまろやかなことばがスリーコード(+@)に乗って私の目頭をじんとさせる。それ以上は不要だとさえ思わせる。じんとするんだよ。ことばに、音楽に。ふたつは一体のものでもある。

平易なことばをつかっているから、聴き取って味わってもらえると思うから、曲を聴いてほしい。

間奏部の歌詞のしゃべりが映像的。第三者の観察っぽくもある。歌い手と “あなた” 以外の、ナレーターのよう。これが曲を「永遠」の方に引き揚げていくみたいに私は感じる。“あなたのいない部屋で電話のベルが鳴っている” と私は聴き取った(『すばらしいさよなら』より、作詞:友部正人)

ボブ・ディランの詩を思う。どこがどう、とは私にはいえない。友部正人は海外の詩や音楽にも精通していて影響を受けている人なんだと私は思う。彼が平静に詩を書くほど、私の感情は高まるみたいで不思議を感じている。

青沼詩郎

友部正人 公式サイトへのリンク

『すばらしいさよなら』を収録した友部正人のアルバム『遠い国の日時計』(1992)

かもめ児童合唱団『ワンダフル・ミュージック!』(2019)

ご笑覧ください 拙演