わかってほしい ゆらゆら帝国 曲の名義、発表の概要

作詞:坂本慎太郎、作曲:ゆらゆら帝国。ゆらゆら帝国のアルバム『3×3×3』(1998)に収録。

ゆらゆら帝国 わかってほしいを聴く

真ん中を叩き壊して突進してくるようなサウンドです。ドラムスがルームアンビエンス感あるオト。スネアはパコっと短くタイトな音質なのを、このルームアンビエンスが与える余韻がリッチな印象にしています。

ベースのふしの付け方が細かくて雄弁です。ベースで歌っている。地面から雲の上まで突き抜ける反復運動を青空の元で演じているみたいです。身を潜めてを爆発的な反射力で獲物を仕留める肉食獣のようなベースさばきです。

ギターの狂ったようなガチャガチャしたストローク。ずり上げ、ずり上げ、ずり上げます。そう、「ザ、ザ・ザ」……というリズムパターンを繰り返すヴァースと「わかってほしい」を唱えるコーラスのシンプルな対比、そして中間のガチャガチャと楽器と声が叫び上げるパートで成立しています。シンプルですが起伏に富んだ楽曲です。

唐突なカットで曲が終わってしまいます。次曲『昆虫ロック』に「つながる」演出のような、それでいて完全な分断で神経回路がブッ飛んで異次元から次章が始まるような。唐突に降り注ぐ不条理をそのままに提示した無情な感性を想います。そう、ゆらゆら帝国の音楽には無情や無力感を覚えることがあります。骨組みや枠型の向こう側へのアプローチを試みる態度です。この胸に感情がなくとも、どこかにはある。そこへの接近を試みる「がらんどう」ぶりを時に感じるのです。『空洞です』という代表曲があるのが無関係とは思えません(その個別の味わいの違いはさておき)。

○か×の夢 ○か×の今日 ○か×の明日 ○でも×でもないもの わかってほしい わかってほしい わかってほしい

『わかってほしい』より、作詞:坂本慎太郎

グラデーションなのです。水か油かにきっぱり分かれる物事ばかりではないのです。水と油だって、たとえば宇宙からみれば「地球」の一部としてごっちゃになっています。男と女? 海洋と陸地? 宇宙と地球? 都市と田舎? いったいどこが領域の境目なのでしょうか。

口にまるごとつっこんで呑み込むのみなのです。でもそれでは喉を通らないサイズのものは取り入れることができません。だから、分解して、手に取ったり、個人が口に入れたりできる単位に割り切って、資源としてこの身にとりいれるのです。

そのとき、これはもともと大きいひとつのものだったのを分割したものだという知覚のもと恩恵にあやかれる。それがヒトの知性です。

わかってほしい。

個人の願いだとか欲望でしかないと一蹴するまえに、まず噛み砕いてみてくれよ。あなたにもわたしにも、固有の「わかってほしい」があります。それは地続きに、グラデーションで、他者のそれとつながって一体になっているのです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>3×3×3

ゆらゆら帝国 ソニーミュージックサイトへのリンク

参考歌詞サイト U-フレット>わかってほしい

『わかってほしい』を収録したゆらゆら帝国のアルバム『3×3×3』(1998)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『わかってほしい(ゆらゆら帝国の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)