並の高みの頂の望み

6thオリジナルアルバム『Timely!!』収録作。永遠の夏がパックされている毎年聴きたい感。

作詞作曲プロデュースが角松敏生さん(『WAになっておどろう』の変名作家:長万部太郎さんの正体。V6が歌って認知を得た曲でもあり、角松さんをメンバーに含むAGHARTA(アガルタ)名義でも発表されています)。自分の名前や存在感を押し売る感じがしないのにずっと音楽のもとにいるし音楽を超越した向こう側にいるような気さえする、しかし音楽界の「重鎮」の表現では重すぎる……とらわれない身軽さのようなものすら作品や活動アティテュードに滲み出て思えます。本曲『WINDY SUMMER』ホーン・アレンジには磯広行さん、コーラスには国分友里恵さんなどの参加もあるようです。

山下達郎さんの『SPARKLE』感がすごい。エレキギターのカッティングが楽曲の基盤を引き締めます。ヤマタツさんの『SPARKLE』が1982年、本曲『WINDY SUMMER』が1983年発表なので時代の音、と大雑把に記号化するのも許容でしょうか。

直訳すれば風の吹く夏、風のある夏といった具合でしょうか。風が私には多様な事物の比喩に思えます。夢。時流。機運。巡り合わせ。己の意思で乗りこなし、変えることのできるもの。あるいはこちらの意思に反する向かい風。あるいはこちらの意思に関わらず気まぐれにあちこちへと吹きつけ、吹きゆくもの。そんな観念(WINDY)をSUMMERの観念と掛け合わせにした主題です。このSUMMERも、現実の季節としての夏でしょうけれど、同時に、心の中にある季節、巡っては蘇り再来し回帰する心象の比喩ととらえても良いでしょう。もしも私にサーフィンやヨットの経験があったらこうした単語、本曲の主題が想起させるイマジネーションももっとより豊かになるかもしれません。

“あのころの夢と変わらない Windy Summer 風も今は思い通りね Windy Summer あなたの心へ今すぐ!! Here We’re Windy Summer!!”(『WINDY SUMMER』より、作詞:角松敏生)

2コーラス目、歌詞の象徴的なライン。思い通りになる? ならない? なる? ならない? 俺の波が来た!いまならキャッチできる!乗りこなせる!巡り巡ってピカリと天啓を得る、地域、社会、世界、歴史、地球のうごめきの波長が己のそれとシンデレラフィットして一番高い波をもっとより高くできる、その頂上に乗ることができる!そこからの眺望のような風光明媚さ、爽やかさを感じる楽曲です。

楽曲の構造自体はシンプルでコンパクトかつ端正でお手本、定石。ワンコーラス、ツーコーラスあって間奏あってサビのリフレインがあってアウトロへ。本曲を含め、アルバムぐるみで聴いてみてはいかがでしょうか。

WINDY SUMMER 杏里 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲・編曲:角松敏生。杏里のアルバム『Timely!!』(1983)に収録。

杏里 WINDY SUMMER(アルバム『Timely!!』収録)を聴く

きわめてのびやかなのにおそろしくリズムがタイトでキビキビしていて解像度が高いです。ホーンのピタっと針の先を打ち砕く銃弾のような精度に震えます。ベースもその伸びやかさとタイトさの二面性の象徴です。スラップめいたギラつく音色と、ずぅんと絹のようになめらかな伸びを兼ね備えた質感で、どっかりと安定しつつ蠢く大海の水面のような印象です。シンセサイザーが機械的に分割する……この波長の間隔は1拍6連なのかなんなのか、人工的な目盛りにも人間の演奏がピタっとフィットします。イントロ付近では印象の強いエレキのカッティングも本編ではオケに馴染み風景の一部に溶けます。タンバリンが裏拍をチキっと示します。つい16で振りたくなるところ、描き込みの制動が効き光ります。サックスソロで夏が来た感。

エンディングはⅠとⅡmを反復してフェイドアウト。これまでの楽曲中にないパターンで楽曲のなかの夏に額縁を与えます。

青沼詩郎

参考Wikipedia>Timely!!

参考歌詞サイト 歌ネット>WINDY SUMMER

杏里オフィシャルサイトへのリンク

角松敏生 OFFICIAL SITEへのリンク

『WINDY SUMMER』を収録した杏里のアルバム『Timely!!』(1983)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『WINDY SUMMER(杏里の曲)並の高みの頂の望み【ギター弾き語り・寸評つき】』)