作詞:柴山俊之(補作詞:Chris Mosdell)、作曲:鮎川誠、細野晴臣。シーナ&ザ・ロケッツのシングル、アルバム『真空パック』(1979)に収録。

ユーメイ(有名)になるドリーム、のしゃれを思わせるタイトルです。サウンドはプロデュースを担当されたのが細野晴臣さんとのことで、いかにもYMO『君に、胸キュン。』を思い出させるものです。シンセサイザーが広げる音像、間奏……ではないか、Bパート?のせりふの部分は相似する意匠を見出すのはたやすいでしょう。

同時に思い出させるのはサディスティック・ミカ・バンドの存在で、女性ボーカルとエレキギターをかけあわせたロックバンドの体裁はやはり共通するコード(おきまり)、定番スタイルのひとつといってよさそうです。

シナロケ(あえて愛称で失礼)の『ユー・メイ・ドリーム』は、ロックバンドの体をしていつつも、音楽的な意匠を心がけて丁重に作った印象をうけます。生演奏の熱量やグルーヴ感での一筆書きを押し通すタイプの楽曲とはいくぶん異なる趣です。

シンセ・電子楽器系の音が豊かですね。ダウンビートで8を刻むのそうですし、ハイハットやタンバリンをイメージした音もそうでしょう。ブラスの低音をイメージした感じの音はベースギターよりも低域を出している感じで音の印象の比重を占めます。ストリングスっぽい音もいますね。

ロネッツの『Be My Baby』系のドラムスのリズムが合いそうな曲ですが、意外にもドラムスが4つキックを踏んでいます。前に行く感じの推力があるのは、このアレンジが貢献するところもあるでしょうか。

ダブったボーカル像がちょっと奥まった感じもし、バンドの中に接着するでもなく輪郭は決して埋没していないのですが、なんといいますかボーカルも楽器のなかのひとつという捉え方を思わせます。間奏(Bパート)?の「せりふ」の部分のほうがよっぽど音像は近く、生々しいです。案外ここが『ユー・メイ・ドリーム』の肝の部分かもしれません。

コーラス部分のⅥ♭→Ⅶ♭→Ⅰの進行が開放的です。シンプルで、作曲の語彙に困ったらこの進行だけでコーラスが作れることを覚えておきましょう。私がローティーンだった頃にリリースされ、当時私がたいへん夢中になったバンド、L’Arc〜en〜Cielの楽曲『STAY AWAY』も同様のコード進行のコーラスになっているのを思い出します。

同じコード進行をしたサビをもつ楽曲を収集したらかなりたくさん見つかるのではないでしょうか。地平がだんだん上がって、主和音に至る壮大な自浄感・爽快感のある定番の進行です。夢(有名・ドリーム)にリーチする表現として、ベストマッチな意匠かもしれません。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ユー・メイードリーム

参考歌詞サイト 歌ネット>ユー・メイ・ドリーム

シーナ&ザ・ロケッツのアルバム『真空パック』(1979)

ご笑覧ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『YOU MAY DREAM(シーナ&ザ・ロケッツの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)

ユー・メイ・ドリーム SHEENA & THE ROKKETS