You’ve Got to Hide Your Love Away 悲しみはぶっとばせ The Beatles 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Beatlesのアルバム『Help!』(1965)に収録。

The Beatles You’ve Got to Hide Your Love Away 悲しみはぶっとばせ(アルバム『Help!』収録)を聴く

ボブ・ディランの声帯模写か?! と思うくらいに精密なイタコぶりに思えるのですがどうでしょう。ボブ・ディランという歌い手が、まるで自分自身であるかのよう。たとえば召喚獣だったり、史実にもいる英雄・豪傑・有能な猛将などの霊魂を顕現させて戦うなどという設定のロールプレイングゲームなども世には数多あるかと思いますが、そんなふうに、特殊な能力をつけかえ、あるいは自身にインストールして、みな味方にして、器用に使い分けて世界を舞台に戦う。その引き出しの多さ。引き出しの中身の組み合わせ方。それらについて、ビートルズという創作集団は並外れていると思わせます。

しゃがれたような、撫でるように優しいのにぎすぎすしたジョンのボーカルが印象的です。Hey!と声高らかに、群衆に轟かせるような強拍のサビ(コーラス)。同じフレーズの4小節を2回シンプルに繰り返すだけのコーラスが、シンプルにリスナーに版画のように強いコントラストで刷り込まれます。

ボーカルの音形をオクターブ違いの低いところでトレースするベースラインがコーラスのメロディ形を強く印象づけるのに一役買っているでしょう。

左に寄っている、メインの伴奏の12弦ギターがしゃわしゃわと耳触りがマイルド。曲が展開するにつれて右側にも12弦ぽいアコースティックギターがあらわれます。

スネアドラムをパスパスとブラシでアクセントをつけながらこするプレイ。マラカス。チリンとタンバリンが彩りを添えます。

ほぼアコースティックギターのリズムで成立する曲想を補佐的に盛り付けでメリハリをつけたアンサンブルが軽妙です。

エンディングにフルート。低めの音域で、アルトとテナーフルートなのだとか。それまでのビートルズの経歴としてはほぼ初といっていい外部ミュージシャンの乗り込み、ジョン・スコット氏による演奏とのことです。このフルートのサウンドも軽妙な聴きあと味をもたらす要因になっています。Gメージャー調ですが、シ♭を装飾的に引っ掛けるメロディラインがちょっと教会旋法っぽくて、一瞬ですが玄人好きします。

恋は隠さなきゃいけない?

あけっぴろげにしていい恋もなかにはあるでしょうが……

だいたい、ふたりきりの関係形成は街の中で大声をあげてするものではありません。みんなが知らないうちに、そういう仲だったの? というのが概して恋や愛のミステリアスなところ。どんな恋も愛も、少なからず、そういう隠された本質があるものです。

Oasisのカバーがある(『 (What’s the Story) Morning Glory?』Deluxe Edition収録)

ハリのある声がかっこいい。エンディングは声によるスキャット。カリンカリンと乾いた独特の音色のタンバリンがお遍路の僧侶が携行する鈴かな? みたいなキャラクターを感じます。飛翔感と安定感の両方を印象付けるアコースティックギターの伴奏を中心にシンプルに楽曲の良さを降臨させてイタコのように、かつ自分の声で歌い切るさまが凛々しい。エンディングで一瞬客席に向かって囁くようなMCが入っていてああこれはライブ録音だったのかと気づきます。アルバム『 (What’s the Story) Morning Glory?』Deluxe Edition収録で、日本版EP『Some Might Say』に収録された音源とのこと。

青沼詩郎

参考Wikipedia>You’ve Got to Hide Your Love Away 悲しみはぶっとばせ

参考歌詞サイト KKBOX>You’ve Got to Hide Your Love Away

The Beatles ユニバーサルミュージックサイトへのリンク

『You’ve Got to Hide Your Love Away』を収録したThe Beatlesのアルバム『Help!』(1965)

参考書

ビートルズを聴こう – 公式録音全213曲完全ガイド (中公文庫、2015年) 。私は一聴してディランからの影響がわかりやすい曲だと思ったのですが、書籍中、筆者の里中さんはディランからの影響の表出の出方について私があからさまに感じたよりは軽微に評価しているようで「ジョンは他人から影響を受けてみずからの軌道を変える人間ではありません。ジョンは“いいとこ取り”をするだけなんです(笑)」と語っています。いずれにしても、他者の特長をとりいれて自作のヒントやきっかけにする能力の高さときたらビートルズが随一であるのについては世界中がうなずくところでしょう。

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】ジョンのボブ・ディランみ You’ve Got to Hide Your Love Away 悲しみはぶっとばせ(The Beatlesの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)