フラワーカンパニーズ 25時間を聴く

作詞・作曲:鈴木圭介。フラワーカンパニーズのアルバム『50×4』(2019)に収録。ジャケット写真はORIGINAL LOVEの田島貴男さんが撮影したとのこと(参照リンク:BERKS)。『50×4』(2019)は結成30周年で17枚目のアルバム。フラワーカンパニーズメンバーは全員同い年で学年も一緒。アルバムタイトルを見て想像するとおり、2019年は4人全員が50歳を迎える年だったようです。あっぱれ。

“1日が25時間あったなら”のアイディアひとつをまっすぐに伝えます。ご存知のとおり生身で体当たりのパフォーマンスが最強のバンド・フラワーカンパニーズ。

イントロは時計を思わせるギターのモチーフ。深く残響がついて回顧的であり夢のなかにいるような一瞬です。このギターは真ん中定位から、ひゅっと左側の定位に運ばれて残響もドライに変わりバンド全体が鳴り出します。右側にアコギのストラミング。ベースとドラムスは真ん中に重心。BGVもあまり極端な定位には聴こえません、だいたい中央あたりに重心のバランスが来るようにまとめられるか振り分けられた感じで聴き心地がよいです。ドラムスのキックとスネアの棲み分け感が良いのにどちらも太くパワフルでガッツがある。ベースの重厚な質量感、行き届いた演奏も好感です。

生身のままぶつかってくる、虚勢ゼロのザ・ライブバンドのフラカン(愛称で失礼)ですが、この『25時間』は録音作品として先の項で述べたギターの定位や残響感の演出、それからテンポアップと、「バンドと唄」の魅力をお盆に載せてリスナーのテーブルに直行させるアティテュードは守りつつも、DAW(的なもの)上とうまく折り合って丁寧に作ってある印象です。

テンポアップ以降はお祭り騒ぎ。どこまでもいったれ。Aメロと“暮れていく街の色”……のBメロの対比がシンプルな構造ですが、このAメロとBメロとギターソロを組み合わせたシンプルな前半と、テンポチェンジしてお祭り騒ぎする後半も効果的な対比になっています。シンプルなアイディアをコンパクトに伝えたらSSW(シンガーソングライター)的ですが、バンドとしてエンターテイメントする……というとおおげさですが、ちゃんと楽しいバカ騒ぎに昇華してくれている。これがフラカン的なまごころであり、バンド人生の態度であると私をうなずかせる。楽曲の温度感がうつろい、コンパクトなアイディアに情報量をもたせる豊かさです。

エンディングで時計を思わせるギターのモチーフはイントロの再現を思わせつつも、エレキギターとアコギの両方で表現されています。“無理”のボーカルハーモニーが最後、「ミ・レ♯」と「シ・ラ♯」で平行4度になっており空虚。メージャーセブンの和声で帰結感に濁しを入れた遊びです。

図:エンディングの“無理”。ケリをつけない響きで時間とヒトの課題を永遠にサスペンド。

時間の真理

“1日が25時間あったなら 1日が25時間あったなら もう少しゴロゴロできるのに もう少し仕事ができるのに

“1日が25時間あったなら 1日が25時間あったなら もう少し優しくなれるのに もう少し愛してやれるのに”

(フラワーカンパニーズ『25時間』より、作詞:鈴木圭介)

あと1時間あったらの使い道を、はじめは具体的に。続くラインでは、あと1時間あったらこうなれる像を観念的に伝えます。最初のブロックと続くブロックで、映像のピントの合い方を変えているところ、対比がうまいなと思わせます。

“暮れていく街の色 少しさみしくなる 逃げていく季節の影 追いかけても無駄かい?”

(フラワーカンパニーズ『25時間』より、作詞:鈴木圭介)

25時間という主題のアイディアがシンプルなので、ちょっとカメラを逸らすこのBメロパートの存在によって対比が利きます。主題が「25時間」ということでなくても用いれそうなブロックです。それでいて、時間の移ろいの無情さを描いてもいます。

“1日が25時間あったなら 1日が26時間あったなら 1日が27時間あったなら”

“1日が30 1日が40”

“1000までいっちゃえ”

“1万いっちゃえ”

”1億いっちゃえ”

“無理”

(フラワーカンパニーズ『25時間』より、作詞:鈴木圭介)

テンポアップ後のお祭りをやらなかったら2分半くらいで終わりそうなところですが、逸脱せんばかりのエスカレートをやって宇宙までいきそうなスケール感。無量大数いったれ……と際限なくいきそうですが、現実感をもてるぎりぎりの単位としての1億あたりで地上の感覚を持ったまま一言“無理”とオトし、余るほどに過熱したことをテヘっとしておわるようなメジャーセブンスの響きに愛嬌が漂います。

しかし、はじめの純朴な嘆き、“1日が25時間あったならな”に泥を塗っているわけではなく、純粋な嘆きや願望の延長をいけるところまでやってみる、まっすぐな逸脱なのです。はじめのうちの(1日が)30、40(時間)くらいまでなら日々であともうちょっとできないやりたいことがやれそうですし、1日が100くらいまでなら「やば、ちょっと旅行行けちゃうかも」と胸がワクワクします。

限りあるから大切に使おうと思える。1億あっても、それだけ1分1秒をないがしろにする自分が生まれるだけかもしれません。加齢とかどうなるんだろう。マモノの世界でしょうか。

あとがき

歌ネットサイトに歌詞を書くその道のエキスパートをとりあげたQ&A記事シリーズがあります。先日、『音楽劇:コーラス・ミュージカル 「スイミー」』の詞を書いた木本慶子さんについてネットを漁っているとき、歌ネットサイトの「言葉の達人」シリーズに行き当たったのですがそのシリーズにフラカン・鈴木圭介さんも登場しているのに気づきました(歌ネットサイトへのリンク)。「25時間」はその記事で鈴木圭介さんが挙げていたのがきっかけで出会えた楽曲です。

私のフラカン歴は本当に浅く狭いもので、いつだったか大宮エリーさんがMCをつとめて、かまやつひろしさんがまさかのローディ役(という設定)の音楽番組にフラワーカンパニーズが登場してトークし『深夜高速』を演奏したのに聴き惚れたのが一番の思い出です(浅いなぁ)。

アルバム『50×4』はじめ、ほかにももっとちゃんと聴いていきたいと思います。ライブ行きたい。

青沼詩郎

参考Wikipedia>50×4

Flower Companyz 公式サイトへのリンク

参考歌詞サイト 歌ネット>25時間

『25時間』を収録したフラワーカンパニーズのアルバム『50×4』(2019)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『25時間(フラワーカンパニーズの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)