循環↔︎逆循環モデル “恋のテクニック”

緩急があって優雅さと緊張感を兼ね備えたヴァースのボーカルメロディが秀逸。1625のコードがわかりやすすぎる、マージービートの典型といったところでしょうか、骨格、肉付けともにツボをおさえた秀作です。

循環コードのヴァースがブリッジで逆循環になります。|16|25|→|25|16|。モチーフや構造自体がミクロに備えている要素の局所を入れ替え再構築する作曲技法が極めて端正。

ベースが全音下がっては戻るリズムの決めが要所にセクション尻に起伏をもたらします。イントロのピアノの視線をひく動きと響きが絢爛です。スピード感とポジティヴさに満ちていてエネルギーとウィットがあり楽曲のデザイン(意匠)の極め付け。

本曲はビートルズのデビュー曲にどうかと検討されたが彼らが自らのオリジナルソングでいきたいとの意向があったことからビートルズのデビュー曲としては幻になったとの逸話があるといいます。それでGerry & The Pacemakersのデビュー曲となったのですね。ちなみにビートルズヴァージョンも後年発表されています。ビートルズのほうがややオットリとしたアプローチなのが意外でした。聴き比べてみてください。

ちなみにGerry & The Pacemakersは1966年には解散してしまいます。バンドの生命としては太く短いほうだったかもしれません。

How Do You Do It? Gerry & The Pacemakers 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:ミッチ・マレー(Mitch Murray)。Gerry & The Pacemakersのシングル(1963)。

Gerry & The Pacemakers How Do You Do It?(『The Very Best Of Gerry And The Pacemakers』収録)を聴く

バンドの音像がモノラルにみっちり詰まって完璧なバランス。絢爛に出てくるピアノ。歌が入るとリズムギターとのコンビネーションが前に出てきて、セクションの境目にフィルインが入るとドラムがぐんと目を引く。ダカダカダカダカ……と8分のスネアのオルタネイトストロークのタイム感・ダイナミクス感が気持ち良い。

めまぐるしく展開するウワモノの風景とリズムのアクセントの起伏をベースの太い質感の音色が受け切り、ぐいぐいと的確かつ快調なテンポを敷いてドライブしていきます。

短距離走の全力疾走みたいな後味のキレの爽快さ。テンポも早めで「もう終わったの?!」というコンパクトさですが、8小節のセクションごとにあるリズムのキメが聴き心地にメリハリを与えています。ちょっとハスキーにもコミカルにも聴こえるジェリーのリードボーカルのキャラクターが楽曲のまっしぐらな印象に明るい愛嬌を与えています。これはなるほど、このバンドのデビュー曲になって本当に良かったとしみじみ思います。

ビートルズバージョン

ボーカルのハーモニーがさすが。コードにセブンスのヒネった匂いがついています。曲のテンポの手綱をむしろ能動的にグリップしてしっかり空間を鳴らしているフィールが交換です。チンチチチンチン……みたいなライドの細かいリズムのグルーヴ、ドライブ感がツウィストしていて踊りたくなる。躍動しています。クラップも入って両耳を通って脳天が刺激される間隔、甘さ、マイルドさ、エッジが同居しています。改めて、ビートルズはビートルズでさすが。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ・イット

参考歌詞サイト Genius>How Do You Do It?

『How Do You Do It?』を収録した『The Very Best Of Gerry And The Pacemakers』(1984)

『How Do You Do It?』を収録したThe Beatlesの『Anthology 1』(1995)