味の素スポドリCMソングの意匠が沁みる

「テラ」が想いの対象の固有名詞であるようにも、遠く手の届かない雲の上の超常規模の絶対神のようにも響きます。テラ: terraの単語が有する地球や大地の意味相応に、この足元にもあって自分の命を支え、代謝の源になってくれているつながり感も演出します。

なめらかで上下の振れ幅の大きいメロディ形の2小節程度の丁寧な反復が美メロの意匠の秘訣でしょうか。味の素のスポーツドリンク『テラ(TERRA)』CMソング。繊細・洗練・流麗な高いポジションの杉真理さんの歌声とそれを包むシンセのサウンドが神秘で宇宙的。

6月の神話、という表現が歌詞に出てきます。6月は水無月(水の月)ともいわれますね。暑くなってきてスポーツドリンクがほしくなる時候の生活感の切実なニーズと、遠い世界の御伽話のような幻想を融合したうえでタイアップとしての価値・シズル感の提示・展開を試みる制作意図・姿勢がうかがえて巧みです。

いとしのテラ 杉真理 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:杉真理。杉真理のシングル、アルバム『mistone』(1984)に収録。

杉真理 いとしのテラ(アルバム『mistone』収録)を聴く

ニューエイジ的なシンセのサウンドが多彩です。アタックのやわらかい金管楽器系の音色。イントロで巨大な質量を感じさせるストリングス系の音色。ずっとディレイのかかったアルぺジエイター系を思わせる、信号みたいな音色。セクションのはじまりにかぶさるようなキリキリした、サンプルを切り刻むような音色。

多彩な音色に、ズドっと圧倒的な質感でドラムスが大地に杭をさします。ベースは落ち着きがありまっすぐにエイトビートを連ねて地平の遠さ、規模感を表現します。ⅰの低音保続でⅠとⅣmを延々とみせいてくパターン、大サビセクション(とぎれたラインに……)の冒頭でⅣ→ⅳ上のⅤなど、地平の雄大さを思わせる低音保続(あるいは保留)の進行を積極的にとりいれ、主題のテラの雄大さを演出します。ⅰ上のⅠ&Ⅳmを予想させつつエンディングではベースがⅰ、ⅱ、ⅲ、ⅳと上行。地下〜地上の神?のterraが天上・雲上の神への接近をこころみるようなエンディングが、スポドリで潤したカラダと精神での「挑戦」の果ての未来図を想起させます。

かような雄大な音景をもつシンセ多量のオケをバックに、杉さんの繊細な声がダブリングの輪郭で歌詞の儚く遠くかすれてしまいそうな印象の思想を表現していきます。Cメージャーキーで、Aセクションの歌い出しからいきなり上のソ(G)の音から入ります。楽曲中のリードボーカルパートの最高音程はこの長2度上のラ(A)で、サビや大サビでちょっと出てきます。Aセクションなどは、多くのポップソングにおいては落ち着きのある「起伏」でいえば「伏」の部分として意匠される傾向があり、リードボーカルの使用音域でいえば低め〜中くらいのところにいることが多いですが本曲のAセクションはなかなかトバしていきます。

2コーラス目のサビセクションに突入するときに、左定位からざわーっと潮騒がうごめきだし、右定位にざっぱ〜んと豪快に波が打ち砕けるみたいな謎の効果音が聴こえます。チキ、と要所を狙ってタンバリンが口数すくなくも星のような輝きを添えます。サウンドの細かい演出にも聴き惚れるしかけがちりばめられていますね。

青沼詩郎

参考Wikipedia>杉真理

参考歌詞サイト 歌ネット>いとしのテラ

杉真理 オフィシャルサイト MASAMICHI SUGI OFFICIAL SITEへのリンク

『いとしのテラ』を収録した杉真理のアルバム『mistone』(1984)