うたの栄養が詰まってる
小学生が私に教えてくれた歌。最近の版の『歌はともだち』(教育芸術社)に載っているのかなと思ったら最新の「7訂版」には載っていませんでした。載っていた時代(版)もあるのでしょうか。
サブスク(私の使っているApple Music)で本曲の検索をするとえびな少年少女合唱団、杉並児童合唱団などによる実演がヒットします。それぞれに聞きやすさや南国っぽさの演出にかける工夫の感じられるアレンジがなされています。『みんなのうた』としてのオリジナルは1974年の菅原洋一&杉並児童合唱団によるものかと思われます(参考サイトへのリンク)。
原曲は西インド諸島民謡とされています。パブリック・ドメインですね。読み人知らず。ハリー・ベラフォンテが歌った『さらばジャマイカ(Jamaica Farewell)』も西インド諸島民謡とされています。私を誘引する歌心が西インド諸島にはありそう。
「いろんな木〜の〜」……と、主和音ならびにダイアトニックスケールでいうⅲの音を同音連打するモチーフはシンプルでありながら、音価を狭い方から広い方へと展開していく絶妙な設計美があります。このモチーフをⅳの音程に上げて、歌詞までそのまま反復し、「実がなるんだよ」のフレーズで結びとして受け止め切ります。これら、「いろんな木の、いろんな木の、実がなるんだよ」が6小節のまとまりをなしているところも、関心が瞬間瞬間で風向きが変わるみたいにうつろっていく少年少女の心にうなずきを与えているように思えて童謡としてのふさわしさを見出せます。「4+4=8小節」のパターンは楽節構造の基本単位ですが、それゆえに「おきまりのオチを踏む」感じの既視感、冗長感がついてまわるのも宿命でしょう。
先項目に述べたように、シンプルな構造をしていながらも音楽的に引き締まった……さながらいろんな「木の実」のような凝縮した純白な栄養がある曲ですので、もしこの記事をご覧の方に「弾き語りで世の中のいろんな歌を耳コピして演奏してみたい」なんて人がいようものなら、本曲は導入、初級編として至極おすすめです。
「丘の桜のさくらんぼ」、「黄色いバナナが熟れるのは」「せいたかのっぽのパパイヤの実」「パイナップルはかくれんぼ」と、いろんな実が出てきます。木の実(ナッツや種子の類)と果実(フルーツ、くだもの)は私としてはだいぶ印象が異なりますが、まぁ果実も含めて広義に木の実、「木になる実」なのでしょう。
「鬼さんどこだろキョロキョロ」……と鬼をわざわざ探してしまうところがおかしみ。キョロキョロしたら逆に鬼に見つかってしまわないか心配になります。急に実在するかわからない「鬼」が出てくるのは、島(西インド諸島)の伝承などと関係があるのでしょうか。日本語歌詞をするときにオリジナルでひねりだした名詞が鬼なのか、あくまで現地で歌われてきた言語に「鬼」に相当するものが登場していたのか未確認です。
……と、「のっそり毛虫もぶらぶら」「猿が木登りするする」「(ちぎれ雲が)遊びに来ないかフワフワ」そして「鬼さんどこだろキョロキョロ」と、オノマトペをつかって動作や動作の主体の固有の質感のシズル感(そのものらしさ)を表現する作詞にも、木の実のようなおいしさ、栄養素が詰まりに詰まっていて見習うべきところに富んでいます。
日本語訳詞の中山知子さんの作歴は「みんなのうた」で放送された曲や童謡のレパートリーに例が多いようです。
いろんな木の実 西インド諸島民謡由来の童謡、“みんなのうた” 曲の名義、発表の概要
西インド諸島民謡。作詞・作曲:不詳(パブリック・ドメイン)。日本語訳詞:中山知子。菅原洋一&杉並児童合唱団による実演(編曲:小森昭宏)が『みんなのうた』で放送された(1974年、NHK)。
児童合唱の実演
えびな少年少女合唱団
スティールパンの音色、シロフォンやマリンバの音色、グロッケンの音色をデーンとティンパニの音色を効果的につかいます。ビヨヨヨヨン……とかスライドホイッスルとかハープのグリッサンドとかもあり。児童の声が凛としています。
杉並児童合唱団
ラテンパーカス、ホーンの類が陽気で南国、島の気候を想起させます。オブリのフルートも雄弁。
青沼詩郎