血統の表明
クレイジーケンバンドの傑作。シングルで出て、数年越しにオリジナルアルバムに収録されます。アルバムバージョンは横山剣さんがラジオ出演して本アルバムの出来をインタビューされるみたいな演出がオープニングについています。
主題歌、そしてバラエティ番組などのBGMに用いられる例も多いのではないでしょうか、「俺の話を聞け」のサビがあまりにも突出して印象的です。
ボーカルの音域自体は1オクターブくらいにおさまります。メロディも上下の動き、跳躍、同音連打などの要素をみるに比較的平易で研ぎ澄まされています。だからこそ横山剣さんの歌唱により与えられる光と影と横須賀テクスチャーのクセ感なおも激映え。サビのベースラインの完膚なきまでに半音ずつ下がって来る描線は、対象(お前)の肩をとっつかまえ、振り向かせ、徐々に落ち着かせて話を聞かせるアニキの技術のよう。
和田アキ子さんを思わせる歌唱が尊い……と一聴して思いましたが実際本作作曲のエピソードとして、和田さんが歌われるイメージで作ったという前提・背景が実際にあるそうです。子音が前にぐっと飛び出し、「あ」の母音に対して幻の「h」の子音まで滲み出るかのような歌唱が血統を表明します。
タイガー&ドラゴン クレイジーケンバンド 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:横山剣。クレイジーケンバンドのシングル(2002)、アルバム『Soul Punch』(2005)に収録。
クレイジーケンバンド タイガー&ドラゴンを聴く
いぶし銀。すべてのトラックが雄弁に歌ったり、かと思えば心を凪にして歯車になり横須賀の風景に溶ける。ギラついているのに飽和してもいない。光が映えるための闇を心得ています。
左にエレキギター、シャープナインスのくすんだ濁った響きがおあつらえむき。右にタンバリンが対になった定位。これがまたよく歌うしシックスティーンを敷き詰める素地にもなります。フルートが闇に光のチョークを擦り付ける渋み冴える華。ベースとドラムのパンチリーなサウンド。ピチョピチョとロータリースピーカーのようなエフェクトで結露がしたたりほとばしるリードギター。オルガンがささやかに道路の中央線のように道標を照り返します。横山さんの歌唱は終始単一の描線、オーバーダブやハーモニーの追加はありません。エンディングのハッ!のかけ声がそのサウンドとともに脳内までこだまします。
大袈裟な楽団や、録音作品としての演出の過剰な追加はありません。楽器の種類の数だけのメンバー数で、闇夜の繁華街の小箱に詰めかけてそのまま再現できそうな身の丈きっかりの編成・サウンドで「俺の話を聞け」。等身大のぶつかりあいです。
背中で睨み合う虎と龍じゃないが/俺の中で俺と俺とが闘う (『タイガー&ドラゴン』より、作詞:横山剣)
なにかアニキ分と弟分、あるいは主人公と(恋)愛の対象のストーリーにも思える一方、自己葛藤、おのれのなかの複数の人格の格闘にもおもえるエンディング付近のAセクションの再現部の歌詞が尊い。
そして「電気海月よ」が、なんのことをいっているのか。すべてを昇華して一絡げに言語や1人の生涯すらも超越した光陰、悲喜交々を束ねてまとめあげるシンボル。街のネオンなのか、月光を浴びた港湾生物なのか。
青沼詩郎
参考Wikipedia>タイガー&ドラゴン (曲)、Soul Punch
クレイジーケンバンド OFFICIAL WEB SITEへのリンク
シングル『タイガー&ドラゴン』(2002)
『タイガー&ドラゴン -完全版-』を収録したクレイジーケンバンドのアルバム『Soul Punch』(2005)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『タイガー&ドラゴン(クレイジーケンバンドの曲)血統の表明【ギター弾き語り・寸評つき】』)