野心の嗜みを問う

ボーカルがきっかり1オクターブに収まる音域で安定した響きとボーカリストの声質の魅力を保ち常に発揮し続けやすい楽曲だと思います。

「ちょっと・ちょっと・ちょっと……」がなんだかちょっと『キューティーハニー』っぽい。“ワルになってみたいだけ”→フリ。可愛げがあります。 “先生!あんた踊れるか?”シビレる秀でたコピーだと思います。何かやってる人。勉強だけじゃない。社会通念や常識だけにとらわれない。自分はこれだと思うものを何かしら嗜み、心血を注ぎ、たゆまぬ研究・鍛錬に打ち込みつづけているか?そういう人は、人の前に立っても説得力を発揮すると私は思うからです。いろんな壁や課題・障害にぶつかって、自分の頭や体で具体的な解決の方法をあまた試みてそうした人生の問題を乗り越えてきた人の軌跡にこそ、あとに続く人のためのヒントが溶けていると思うからです。問題を乗り越えて来た人の軌跡から、次の世代が資源を抽出するのです。そこで先生!あんた踊れるか?なわけですね。もちろん生徒が年下だとしても、先生のほうもお前こそ踊れるのか?と言い返す権利ももちろんあるでしょう。お互いを尊敬しあいたいものですね。

ロックンロールとヒルビリーの足し算=ロカビリー≒見た目、質感の話という私個人の偏見があります。ロカビリーと聴くと、なんとなくそのジャンルの発端となる精神性よりも音楽の表層的なファッション性を思い起こしてしまうのです。この楽曲のオリジナルバンド、CADILLACを “チェッカーズの対抗馬”みたく評価した人も当時いたとかいないとか。BOØWYのハリがありコシの強い歌声のイメージ、岩崎良美さんの『タッチ』のポップ要素などもなんとなく私としてはこの楽曲とイメージが重なってきます。ボーカルの存在感、バンドの演奏が確かです。CADILLACはそのキャリアの初期にポプコンで評価された実績もある3人組。メンバーチェンジせず2003年に活動再開。3人ともが作詞作曲に携わるし、この楽曲のように作家から提供を受けたり(片方だけの提供を受けたり)といった柔軟で多彩な制作体制を持つバンドのようです。

先生! あんた踊れるか? CADILLAC 曲の名義、発表の概要

作詞:秋元康、作曲:長沢ヒロ。CADILLACのシングル(1987)。

CADILLAC 先生! あんた踊れるか?(『ゴールデン☆ベスト 1986-1989 MOON YEARS』収録)を聴く

常にツヤとハリをまとい、ノドのうなりガナリをところどころ効かせたボーカルが気持ち良いです。ズズズズルいぜ、とかゴゴゴゴネるぜとか、濁音を連ねるアクセントが快感。ドラム・ベース、ギターのベーシックやカウンター、ソロのテクスチャー含め演奏が確か。ドシ!っとサビまえにキック・スネアのキメが繰り返しドンピシャでハマります。

ペカペカした軽いサウンドのエレキにアーミングで音程の下方向への揺らぎを加えます。エレキ歌謡といったサウンドを想起します。またシンセピアノとでも形容したらいいのか、いかにもカラオケ文化の全盛を宣言するみたいな鍵盤のサウンド、シンセのサウンドが盤石なベーシック・バンドの演奏にきらめきや質感をくわえます。大衆音楽としてのよくできた感じ。ここぞのところでボーカルがハーモニーになる。コピーで真似しやすい・真似したくなるシンプルさ。カウベル、コンガなどの皮ものダイコなどパーカッションも薄化粧に貢献、サウンドを型におさめるバランス感が秀逸。ロックであること、ロカビリーであること、歌謡曲であること……いろんな観念の「型」のツボをおさえた着こなし上手な印象です。決め手としてはあくまでシンボリックで大衆的であることへのポリシーを感じます。

がむしゃらになんかやれればいい(踊れればいい)わけではない。お!あんた(先生)分かってるね!という、記憶のなかの何かが思わず反応しちゃう野心を「踊り」が象徴します。ダダダダ・ンダー・ダ!っていうエンディングのキメまで気が効いています。

青沼詩郎

参考Wikipedia>キャディラック (バンド)

Cadillac Golden Oldie バンドデビュー30周年 キャディラック Webサイトへのリンク

『先生! あんた踊れるか?』を収録した『ゴールデン☆ベスト 1986-1989 MOON YEARS』(2024)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『先生! あんた踊れるか?(CADILLACの曲)野心の嗜みを問う【ギター弾き語り・寸評つき】』)