先日、くるりの『BABY I LOVE YOU』を検索したら、斉藤和義にも同名曲(表記がちょっと違うが)『Baby, I LOVE YOU』があることを思い出した。

同名異曲が多いのも「わかる」と思える、曲のタイトルが持つ普遍的なメッセージ。

コードはシンプル。歌メロディはペンタトニック・スケール。歌詞の内容もラブソングだと思える。でも印象に残る一行がある。

“冷めてる奴が言う 「どうせすぐあきるさ」 そんな奴に見せてやりたいな あのくちびる あのときの顔”(『Baby, I LOVE YOU』より、作詞・作曲:斉藤和義)

あのときの顔」とある。「あの時ってどの時?!」なんて野暮なことを訊いてはいけない。あの時といったらあの時なのである。

私ならためらってしまうような、直球で赤裸裸な表現だと思う。ここに斉藤和義らしさを感じる。

シンプルに思えるけど、演奏の録音がとてもよくつくり込まれていて、コーラス(サビ?)部に私は4本のギターが重ねてあると見る。左右に2本ずつ振られていて、それぞれが違ったキャラクターの演奏をしている。右にはアコースティック・ギターも出現する。

コーラス部のコード進行にも変化が与えられていて吉。副次調のⅤが2カ所に表れていて、ぎゅっとシンプルな曲調を引き締めている。副次調のⅤというのは、今うたっている歌の音階にない音をその和音の中に必ず含めることになるから、その瞬間に異質な響きがして、緊張感や注目度(注耳度?)を高める効果がある。

シンプルに思えて、コードストロークが重要な役割をしている。ドラムスのキックの強拍4つ打ちの押し出しが強い。ベースとギターのストロークが1、2拍目ではそれに同調して乗るが、3、4拍目でウラ拍を絡めてそれを外している。ギターとベースのユニゾン・プレイが吉。

1996年のシングル曲で、アルバムに収録されるのはだいぶ先。2005年の『白盤』が初収録となる。1996年当時にもアルバムを発表しているのに入れなかったみたいだ。

この曲のエンディングにジャーンと鳴るコードはシックスの響きなのだけれど、この響きはThe BeatlesShe Loves You』のエンディングのコードと同じ特徴を持っている。斉藤和義の音楽性からして明らかにリスペクトであり、意識していると私は思うがどうか。またそこがすごくいい。ロック愛を感じる。「アルバムに含めないシングル曲」という点でも両者は似ている。

「シンプルな印象」を演出して魅せた、非常によく作り込まれた曲。

青沼詩郎

『Baby, I LOVE YOU』を収録した『歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007』(2008)

『Baby,I Love You』(1996)を収録した斉藤和義のアルバム『白盤』(2005)

ご笑覧ください 拙カバー

コードストロークの再現性が低い。精進します

青沼詩郎Facebookより引用
“1996年、斉藤和義のシングル曲『Baby, I LOVE YOU』。同時代のアルバムには収録されず、2005年『白盤』で初めてアルバムに収録。
「冷めてる奴が言う どうせすぐあきるさ そんな奴に見せてやりたいな あのくちびる あのときの顔」という恋愛の歌詞が赤裸々で印象に残る。
ペンタトニックスケールの歌メロとシンプルなコードが軽妙な聴き味を醸してるけど、実は意外と芸がこまかい。
コーラス部では2種類の副5度コードを2箇所にずらして用いて変化を出しているし、左右合計4本くらいのギターが重ねてあるように聴こえる。右にアコギとトレモロエレキ、左にクローズドなハーフミュートのアルペジオエレキとクランチなギターのオープンなアルペジオ&オブリガード。そのままトレモロサウンドのコンパクトなギターソロに突入。
最後に初めて出てくるパターンの2本のボーカルの掛け合いが意味深。エンディングの6thコードはThe Beatlesの『She Loves You』を思わせる。曲のコンパクトさやシングル曲という独立性の面でも通ずるものを感じる佳作。”

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