眠たくてしょーもないときは煮干しを噛めばいいと思う。

噛み砕いて唾液とまぜて、形がなくなるくらいまでじっくりあごを動かすといいと思う。

そう、今わたしは眠いのだ。昨日も眠かったし、一昨日も眠かった。眠くならない日って、人生に一日でもある?

24時間緊迫し続ける特殊な非常事態にでもなれば眠気を排除できるだろうか? そんな経験は私にはない。仮にそうなったとしても、眠気はきっと、必ずどこかでやってくるのではないか。(どこから来るのだろう?)(私の中から? 外から?)

眠い時、私はアメをなめる。なめて、つい噛んで砕いてしまう。

噛んで砕いてしまうから、眠気を退ける口内の異物感がすぐになくなってしまう。だから、続けてまた新たなアメを口に放り込む。噛んでいない状態を「口寂しい」と錯覚しだすのだ。たばこを吸い続ける人をチェイン・スモーカーと呼ぶなら、私はチェイン・キャンディ・クラッカーだ。バリバリ。まだ砕いてねぇアメはねぇが?(なまはげ風)

アメは糖分が補給できて、アタマが動くようになる(気がする)のはいい。けど、あんまり摂りすぎるのはよくない。口の中の感覚が「あまっあま」状態になるのも不本意。毎日そうしていたら、チェインで摂りすぎた糖分が招く生活習慣病の足音も気になる。

そこで、私はクローブを噛むことにした。

クローブはスパイス。

紅茶やカレーに使う。

香りが強くて、噛むとピリリとし、やがてヒリヒリし、ついにはジンジンして涙が出そうになる。刺激的なのだ。

抗菌効果があるという。この「しびれ」がそれだろう。噛めば実感できる。

クローブは漢方にも用いられる。別名、丁字。その姿は小さく短い釘のようで、「丁」の形に見えなくもない。

クローブ。甘く清涼感があり、突進力ある強い芳香。

私はこれで眠気を迎え撃つ。固くてコリコリしていて、強く噛めば砕くことができる。

はっきりいって、食感は悪い(そもそも「食べるもの」じゃない。風味と香りをつけたら取り出すか、食べたり飲んだりするときに取り除ける)。舌や喉など、口内にかけらが張り付いて「えごえご」する。この不快感を眠気の撃破に役立てるのだ。でもその主力はあくまで、顔が歪むほどの猛烈な「しびれ」である。

噛み潰せば不快な触感が口中に展開される。しばらく奥歯で甘噛みしたり舌の上で唾液に浸したりして、しびれを研磨するように不快を愉しむのもいい。その時間だけ、眠気を遠ざける効果は持続する(はず)。

なんでおれはこんなにしかめっ面をしながら不味いものを噛みしめにゃならんのだろう。すべての元凶は眠気にあるのか? 眠気の奇襲を許すような生活を選んだおれの自己管理の至らなさの呪いか?

不味さと強烈な「しびれ」の苦痛。そんな体感にあえて自分を導き、快楽を得ているのだとしたらそれでいいかもしれない。でも、私はそれを望んでいない

アメでもクローブでもない、対眠気兵器を策定すべし。

・ちょっと固めで噛み応えのある食感であること。

・乾いていて、保存が効くこと。

・糖類を用いた加工品でないこと。

・味はいいほどにいい。

・安価で手に入りやすく、一般的なものであること。

・そのまま食べられて、任意の量を取り出しやすく、手や周囲を汚しにくく、自分でなんら加工をほどこさなくても上記の条件を満たせるもの。

・なんなら、健康に良さそうなもの。

これら諸条件を鑑みて、冒頭の提唱に戻る。「煮干し」はどうだろう。完璧じゃないか?

それもそのはず。直感による仮説として「煮干し」をまず答えに立てた。それを擁護する条件を設定しただけだ。なぁにが「策定」じゃい。

ナッツ類もいい線だ。余計な混ぜ物がない商品は意外と値段が高い。安物のミックスナッツは概してピーナッツ(中国産?)の割合が高く、塩と油にまみれがち。

ドライフルーツも優秀だ。元々含まれる糖分量、ベタつきがやや気になる。ドライいちじくは秀逸かもしれない。甘すぎないし、表面もさらっとしている。値段の問題さえクリアできれば理想的か。味も抜群だろう。煮干しに飽きたら、いちじくだな。

なんて策定をブラッシュアップしながら、眠気との攻防の最前線で煮干しをチェイン・クラッキングしまくっているアゴ軽(足軽)な私。新兵器を策定したところで結局は力比べだ。今日の眠気はいつになく豪腕。こんな兵力、いつの間に蓄えた?

戦は互いを消耗させる。

協定こそが平和の道だ。

ちょっと我慢したぶん、ちょっと譲歩してもいいだろう。

今から10分、ちょっと寝ていい?

(勝手にしろ)

青沼詩郎

中身とラベルが違う