テレビを飛び出し街へ 雲上の女神のほほえみ

『ブラタモリ』のオープニングテーマ(2015~2024)。

陽気なんだか冷静なんだかオトナなんだかコドモなんだか。カテゴライズを、フレーミングを、言葉が決めつけようとする観念の境界線をあざわらうみたいに、都市の警官も無段階につづきながら百景に変化します。いつのまにか田舎に変わっていても不思議ではないのです。人生における子供時代も就労期もまさに重ね合わせでありグラデーションです。気負わずカジュアルでいるシュミの良さよ。

中南米あたりを想起させる音楽スタイルを着こなす熟練。おそろしくなめらかなメロディを含むソングライティングの磨かれた手技がうなります。おおげさに吹聴することなく、しれっと艶めかせ自然光を味方につけます。

本曲はカバーアルバムの『UNITED COVER 2』に収録されています。『氷の世界』のセルフカバーも含み、崩して歌っていても的を射ている・ツボを押さえている、この時代だからこその井上陽水さんの精神・肉体アプローチが詰まった変幻自在で柔軟なカバーアルバムです。

本曲はテレビ番組のために書き下ろしたのではないかと察するのですが、Aセクションの歌詞が

”ハロー ハロー お元気? 今夜なにしてるの? TVなんか 見てないで どこかへ 一緒に行こう”(『女神』より、作詞:井上陽水)

です。テレビ番組に起用する曲で「テレビなんか見てないで」が痛快・皮肉。「ブラタモリ」は街に出て、その地理を、地球の息吹をあなたの五感で解釈してみようぜ!といった都市や街を主たる視点にしたアウトドア精神に満ちた番組だとも思うので言い得て妙の作詞です。女神が雲のうえで我々にほほえんでいるみたいではありませんか。

女神 井上陽水 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:井上陽水。編曲:相川等。井上陽水のアルバム『UNITED COVER 2』(2015)に収録。

井上陽水 女神(アルバム『UNITED COVER 2』収録)を聴く

休むことなくパーカッションがカチャカチャと定常リズムをきざみます。不眠都市のようです。コンガ・ボンゴ、アゴゴベル、ティンバレスあたりでしょうか。

ピアノのすべるような快活な散歩のあしどりを思わせる移勢のリズム、安定したダイナミクスがいぶし銀。2拍目裏の食い方がしれっとしてきわめてなめらか。ベースの音が耳あたりまろやかです。

ギターのたぐいがいないようでしょうか。和音はもっぱらピアノとホーン、ストリングスが醸します。編曲者の相川等さんはトロンボーン奏者のよう。間奏で、トランペットのパリパリとハリのある中高域とトロンボーンの中低域がバトンをわたしあい、しまいには女神と我々(地上人)のさんぽのあしどりがランデブーするみたく重なり合います。

最初から最後まで安定した音像がつづきます。高速道路や鉄道から景観をながめているような気分です。エンディングのキメを象徴に、リズムが非常に精密です。陽気で気分がいい。その味わいを保証する技量をオケに感じます。陽水さんの歌声は天上のような上下方向の振れ幅をシタマチの水平方向に展開したような、どこの街にも何人かいる優れた職人さんのような身近さと凄みをおもわせます。街をブラついてもらえれば会える歓迎者であり、自身もまちをブラつく訪問者でもある。自由と趣味の深さを持って歩きたいですね。

青沼詩郎

参考Wikipedia>UNITED COVER 2ブラタモリ

参考歌詞サイト 歌ネット>女神

井上陽水 オフィシャルサイト Yosui Inoue Official Siteへのリンク

『女神』を収録した井上陽水のアルバム『UNITED COVER 2』(2015)