愛の抽出拡大濃縮純化
人生をすべておえたあと、天のうえの日曜日で古き良き時代をかえりみるみたいなアガった感(ととのった感、仕上がった感)。シルキーでなめらかで甘くおだやかな原曲のフランキー・アヴァロンの歌声と曲調はせせこましい現代の鎮魂歌のように響きます。
君と僕はカンペキな愛をみつけた……といった歌の内容、なかなかない純度の理想です。あるいは幻想の抽出・拡大かもしれません。現実のなかでうもれてしまう一瞬の美しい真実や、マーブル模様のなかに刹那にあらわれる奇跡。フィクションはそうした稀なものに着目し、拾い上げて純度を高めて表現することがそのものらしさ(シズル感)です。愛の抽出拡大濃縮純化よ……。
本曲のメロディの基盤になっているのはイタリアの歌だそうです。民謡などその類の大衆歌、パブリック・ドメインベースといった感じなのでしょうか。作詞作曲はフランキー・アヴァロンのプロデューサー・マネージャーといった運営陣なのだそうです。
本曲を知るきっかけを私にくれたのは、ジャッキー吉川とブルー・コメッツのメンバー(Gt)として活躍した三原綱木さんがGS全盛期ののち、デュオ歌手つなき&みどりとして活躍したときにアルバム『愛の挽歌』(1973)収録曲として本曲『Why(ホワイ)』をレパートリーにしていることです。こんにち(この記事の執筆時)サブスクで聴くことができるのでそちらもぜひ聴き比べてみてください。
Why Frankie Avalon 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Peter De Angelis, Robert “Bob” Marcucci。Frankie Avalonのシングル(1959)。
Frankie Avalon Why(『Greatest Hits』収録)を聴く
歌詞だけみると純度の高い愛をおもわせるのですが、音楽をきくと、案外眉間にしわがよってしまうような感傷的でアンニュイな和音がしばしばつかわれており、完璧にみえる二人の愛にだっていろいろあってそれを乗り越えた結果今(完璧)にいたっているんだ、どいうドラマを思わせます。本曲が美しくて情緒に溢れる所以でしょう。
右定位にズモズモとベース、それからエレキギター。2分音符単位のおおまたぎなストロークで楽曲のオットリしたおだやかさを表現します。
まんなかあたりでペンタトニックスケールっぽいベースラインを弾いているのはピアノでしょうか。楽曲のゆる〜いスウィング感を表現し、憂鬱にさせる数多のトラブルを乗り越えても最終的には遠くからながめているようなある種の呑気さ、人生アガった感じのポジティブさ・陽気さを私に印象づけます。
チコチコとグロッケンの音色が豊かで派手だなと思ったのですが、途中で猛烈なトリル奏法が出てくるあたり、これはグロッケンじゃなくてハンドベルだったのか?と思わせます。最終的にどっちなんだかわかりません。イントロやアウトロでエレキギターとのシンクロをみせます。エレキギターが表現する刺繍音は省略しています。
本曲の表現に欠かせない「ふたり」。女声が途中でリードを受け継ぎます。Fran Loriによる客演だといいます。楽曲全体に占める割合としてはわずかですが、ふたりがかけあい、愛の視線がまじわる光景を私にプレゼンします。
つなき&みどりの『ホワイ』(アルバム『愛の挽歌』収録)
フルートのオブリガード、エレクトリックピアノのダウンストローク。なんだかちょっとカーペンターズ的なサウンドだとも思います。アイラブユー、エンユーラブミー……と歌詞に応じてすかさず二人のリードボーカルが機敏にいれかわるところ、お二人の男女編成を最大限活かして楽曲の主たるモチーフ・相思相愛を表現します。
青沼詩郎
参考Wikipedia>フランキー・アヴァロン、Frankie Avalon discography、Why (Frankie Avalon song)
『Why』を収録したFrankie Avalonの『Greatest Hits』(1960か)
『Why』を収録したFrankie Avalonの『25 All-Time Greatest Hits』(2002)
『ホワイ』を収録したつなき&みどりの『愛の挽歌』(1973)