道の途中に腰をおろす

私は自作した曲を歌ったり演奏したりして録音する活動をしている。

生演奏の録音を偏愛していて、打ち込みを一切使わない(もちろん、これまでのところでいえばだから、今後も一切使わないとは限らない)。全ての楽器・パートの演奏・歌唱・録音を、自分ひとりでやる。それどころか、演奏や歌唱の録音において、頭からおしりまで一発で録りきることに以上なこだわりを持っている。多少のヘボやミスがあっても、一発で録りきることを優先する。パンチイン・アウトやツギハギ編集を極力排除している(もちろん、場合によってはそうした技術を使うこともある)。

音楽の好みも、基本的に生演奏・歌唱だけで構築されているものが中心だ。60年代〜70年代くらいのロックやブルース。そしてそれらの影響を受けた第二世代、第三世代…そうした音楽を偏愛している。

そんな好みがあって、逆をいうと、「打ち込み」が好きじゃない。

いや、これには語弊があるかもしれない。もう少し正確に言い直すと、「打ち込み中心の音楽に、好きになれるものが少ない」。

それで、むしろ最近、逆に打ち込みサウンドが気になってもいる。私がディグる余地がありそうだからだ。

打ち込みをバンバン使ってる音楽で私がすごい好きな曲やミュージシャン、何か、誰かいなかったっけかな?

ふと思い出したのが、DE DE MOUSEだ。いつだったか忘れたけれど、確かタワレコの視聴機で出会って、ボーカロイドみたいな不思議な「声っぽい機械の歌」に魅了されてそのCDを買って帰った。『sunset girls』だったと思う。あのCD、どこにしまったっけな。

DE DE MOUSE『sunset girls』は大好きだけど、もっと何かないか。私の好みにゴリッとぶつかって、なんならこの身を削ぎ取っていくくらいの何かが。

そう思いつつ、今日もYouTubeを散歩する。どうもこいつの性能が年々優れて行き、私の好みに合いそうな動画を勝手に私の目に触れるところにレイアウトしてきやがる。その精度も、年々どんどん高くなっていっているように思う。そんなわけで表示されたのが岡村靖幸『ビバナミダ』。

この曲は、今ここでYouTubeを見て知った曲じゃない。アニメ『スペース☆ダンディ』(2014)の主題歌だ。このアニメを私は見ていて、アニメの大ファンだった。

それよりも前から、岡村靖幸のことは好きでいた。岡村靖幸は、私が「YouTubeで音楽を検索して聴く」というリスニングスタイルによって存在を認知したミュージシャンのひとりだ。レンタルCDをひっきりなしに借りてくる、というスタイルが主だった十代の頃の私は、岡村靖幸をまだちゃんと知らなかった。その後、バンドをやっている直接の友達だとか、有名なバンドマンの誰かがフェイバリットのひとつとして岡村靖幸を挙げているのを知って、私は彼の名を検索して『あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう』『カルアミルク』だとかを聴いた。そうしてみると、私はその曲を「岡村靖幸」という名前と結びつけて認知していなかっただけで、どこかで聴き覚えのある曲であったことに気付く。それで、私は岡村靖幸を大変気に入ったのだった。

アニメの『スペース☆ダンディ』の話に戻る。私は、事前にどんなアニメなのか知らなかった。知っていたのはタイトルだけだ。このタイトルの、底知れない「芋っぽさ」に惹かれて視聴したのだ。観てみると、なんとまぁくだらなくて馬鹿で笑えてグっときてぶっ飛んでいることか・・・・!!!とにかく、私にとって素晴らしすぎるアニメだった。私はこれを迷いなく自分史上ナンバー・ワン・フェイバリットアニメとして推す。

『スペース☆ダンディ』の話はひとまず、また別の機会にしたい。

そう、主題歌がなんと岡村靖幸だったという話に戻る。『ビバナミダ』だ。 これは、打ち込みの音が入っている。シンセ系の音も多いが、どれくらい手で演奏しているのだろう。それでいて、たまらなく私の心をつかむ。サビのすこし濁ったキュウンとなる和声なんか最高だ。

で、ちょっと我に返って岡村靖幸のプロフィールを見るに、そういえばそうだった! 岡村靖幸も、ほかでもない、自分ひとりでほとんど何もかもの演奏や歌唱をこなしてしまう人だった。そんな彼の味が、打ち込みという素材を含めて絶妙に調理された魅力的な曲が『ビバナミダ』だ。

歌詞も良い。岡村靖幸の魅力を前にすると、私は一旦語彙の尽きたアホになってしまう。

歌詞 http://www.utamap.com/viewkasi.php?surl=k-140205-132

“再見!” なんて単語、どうやったら出てくるんだ?

歌詞は岡村靖幸/西寺 郷太とのこと。どんな共作プロセスだったのだろう。

打ち込みという観点でひとまず今日はどういうわけか岡村靖幸にたどりついた。この道は、まだまだ面白そうだ。

青沼詩郎

岡村靖幸
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