キセルを知ったのは、コンピレーションCD『みやこ音楽』だった。

そこに収録されているキセルの曲が、『ハナレバナレ』だ。

なんてすごい曲を書くんだろう。

サウンドの質がまず目を引く(耳をつかむ)。

ぼくがくそつまんない語彙しか持たない奴だったら、「ローファイ」とか形容するんだろうか。豊かな語彙を持つ私は…まだここにはいないみたい。

「ローファイ」は、音が悪いということじゃなく、ホメ言葉としてよく登場する。

嗜好を示す際にもよく使われるんじゃないかな。「こういう音、好き」の文脈である。

「あったかい音」なんてふうにもいえるのかもしれない。

「あったかい音」と形容されるので思い出すのは、「真空管」だ。

真空管が使われたアンプから出る音は、「あったかい音質」なんてよく言われる。もう少し鼻息荒くいえば、「ホット」な感じだ。

『みやこ音楽』に収録された、キセル『ハナレバナレ』に、「実際に真空管を用いた音」が果たしてどの程度使われていてどの程度使われていないか、私は知らないけれど。

そう、なんか、「真空管そのもの」みたいな音だなと。いや、それも違うな。なんていうか、存在感が「真空管的」なのである。すぐ、「○○的」とか言っちゃう。やっぱり私には語彙がない。

風味絶佳 ベースのテンションノート

コード進行なんかはわりとシンプルな曲。

ヒラウタは、基本Ⅳ→Ⅰの繰り返し。

サビでⅡ→Ⅵ→Ⅱ→Ⅵ→Ⅱ→Ⅴ→Ⅳ。

このサビ末のⅤ→Ⅳが最高。サビ末というか、Ⅴにいって、そのままヒラウタパターンのⅣ→Ⅰに接続するというだけなのだけれど。なんとも、もどかしい感じ。歌詞とあいまって。

ベースのパターンがすごくいい。

ヒラウタの、Ⅳのときにはメージャーセブンスの音を。Ⅰのときには、シックスやナインスの音を使ってるところがすごくいい。

こういうコード感を出す役割は、ふつうウワモノ(ギターやピアノやほか)に譲ることが多い。

湖水に浮かんで溶けているような、心地良い無力感。そんな境地に誘ってくれるベースパターンだ。

ポルタメントするシンセ系の音も風味絶佳である。「風味絶佳」が書かれたお菓子の箱が昔、あったっけ。なんだったっけかなアレ。名コピーだな。

ポルタメント音は、宇多田ヒカルさんの『Automatic』のイントロを思い出してもらえれば脳内再生できる人が多いのではないか。アレ系のやつです。

楽都・京都

『ハナレバナレ』には2バージョン確認できる。

『みやこ音楽』に収録されているバージョンと、キセルのアルバム(1st)『夢』(2001年)に収録されているバージョンだ。

私が出会った『みやこ音楽』収録の『ハナレバナレ』は、デビューミニアルバム『ニジムタイヨウ』(2000年)から収録したもの。こちらと同じものはさらに『タワー』でも確認できる。こちらはSelected Best Albumということで、魅力的な人選による選曲によるベストアルバム。趣向が凝らされた名盤だ。CD『みやこ音楽』でキセルを初めて知って、私が最初に選んで買ったキセルのCDがこれだった。

CD『みやこ音楽』は、京都のバンドのすばらしい音楽が収録されたコンピレーション。このコンピを主宰(?)したのはほかでもない、私が敬愛するバンド、くるりだ。

そういえば、最近このブログの記事で紹介したバンド・浪漫革命も京都で立ち上がったとのことだった。

京都のミュージックシーンは、ずっとホットだ。私の鼻息は荒い。

青沼詩郎

リンク
キセル オフィシャルサイト
http://nidan-bed.com/