雲をつかむ街の迷子

純情派というだけあってか、同音連打や2度くらいの近い音程をうろうろさまようボーカルメロディが意外とイモっぼい・シャイ・ウブな印象です。強拍を外し弱起で起こるボーカルフレーズが多く印象も儚くて押しに弱いです。使っている和音もほとんどⅠ、Ⅳ、Ⅴなところもまた純情。主人公の強さよりも街の空気に飲まれている景観重視の意匠に思えて主題に適います。歌い出しからちょいちょいおもむろに出てくる英語フレーズも六本木っぽさ。水商売、煙みたいな芸能稼業の匂いだけで出来ているみたいな、雲をつかむような街:六本木を主題にした曲はまま例があります。私の記憶の引き出し的にはアン・ルイスさんの『六本木心中』などはこの曲のアネキ分という気分がします。

自分の影を何に重ねたらいいんだろう。答えを得られずに、みんなをさまよいたたずむ迷子にさせてしまう幻惑の街、六本木は純情派には厳しいもの。短調の風のような響きに吹きさらされて、いつまで純情派でいられるかしら。

六本木純情派 荻野目洋子 曲の名義、発表の概要

作詞:売野雅勇、作曲:吉実明宏。荻野目洋子のシングル、アルバム『NON-STOPPER』(1986)に収録。

荻野目洋子 六本木純情派(アルバム『NON-STOPPER』収録)を聴く

荻野目さんのリードボーカルはつねに単一の描線です。孤独や迷子感の意匠でしょうか。バックグラウンドボーカルが入るときは追いかけオブリガード的なものでWho are you?の主人公の呼びかけに、そちらこそ誰なんだとバックグラウンドボーカルがWho are youを返します。この街には心からのわたくしの知り合いは、友人はいないものなのか。みんながみんなその場かぎりの他人さまなのではないか。

そんな気分を象徴するかのように、ベースラインが常に音と音の間にすきまをつくり、すべての人がすべての人からはぐれているようなサウンドスケープを表現。おかげで局所的にすこし長めの音価を置いたり、連続するストロークをレガートでつなぐ表現に変わるときにリズムや起伏の変化が際立ちます。

ドシっとしたドラムが中央にいて、右に開いてタムだかティンバレスのようなタイコがカンカランとアクセント。右にカチカチと余韻を殺した小さいカウベルのような何か、左に開いて余韻のあるカウベルが間欠泉みたいな信号機のようなリズムでカラカラと笑います。パーカッション類に功労あり。

ピアノ類をイメージしたかんじの音色も生々しいピアノとは違いどこか軽くて嘘くさい。まっすぐに8分割の音価を連ねます。激情が胸のうちでのみこぼれるみたくたまにエレキギターの強い歪みが叫びをあげます。

オケの喧騒のすきまをくねくね踊るみたく荻野目洋子さんのリードボーカルが漂う。ラストのシメのフレーズでブギウギと歌いますがこれのいったいどこがブギウギなのか。定規や枠型をもったまま何にも当てがえずにいる私すら迷子にします。純情やめさせてもらおうかしら。

青沼詩郎

参考Wikipedia>NON-STOPPER、六本木純情派

参考歌詞サイト 歌ネット>六本木純情派

Yoko Oginome | 荻野目洋子公式サイトヘのリンク

『六本木純情派』を収録した『ノン・ストッパー[+10]』(オリジナル発売年:1986)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『六本木純情派(荻野目洋子の曲)雲をつかむ街の迷子【ギター弾き語り・寸評つき】』)